地下が見える マンホールの蓋の読解法編集委員 小林明

「ガタツキ騒音」消す勾配面

マンホールの蓋に凝縮されている技術とはどんなものなのだろうか?

「日本のマンホールの技術は世界最高水準。他国の追随を許さない」。藤原さんはこう説明する。

飛躍的な進化を遂げたのが蓋と壁の接続部の構造だ。

もともとは蓋を壁の受け枠が直接支える構造で「平受け」と呼ばれていた。蓋が受け枠よりも小さく、隙間が空いている形状で、これだと高度な技術はいらない。今も海外で使われている蓋のほとんどがこの「平受け」だ。

だが「平受け」には隙間に砂などの異物が入りやすい欠点がある。さらに、自動車の通行による振動でガタツキが発生し、騒音をもたらす深刻な問題も表面化してきた。

これを解決するための技術革新が「勾配受け」だった。

蓋の側面と受け枠を6~10度の勾配面に加工し、ぴったり密着させることでガタツキが発生するのを防ぐ仕組み。70年代に導入された。製造には高度な加工技術が必要になるが「人家が密集し、道路が狭いという日本ならではの技術革新。海外では見られない進歩」(藤原さん)という。

ほぼ同時に素材も大きく進歩した。もろくてさびやすい「普通鋳鉄」から、軽くて強い特殊合金「ダクタイル鋳鉄」に切り替わったのだ。これに伴い、直径60センチの蓋の重量は80キロから40キロに半減したという。

特殊な凸凹加工(ASD)を施した蓋(日之出水道機器提供)

曲線設計で「食い込み」解消

「勾配受け」に続く構造の技術革新は「RV」。2006年のことだ。

「勾配受け」の開発でひとまずガタツキは防げるようになったが、今度は、蓋の開放が難しくなってしまう「過剰な食い込み」が問題になってきた。原因は蓋と受け枠が密着しすぎること。そこで、接続部分を新たに曲線による勾配面に加工。蓋と受け枠の密着する面積を抑え、食い込みが最適になるように設計した。水理モデルと人間工学をここまで駆使したマンホールは日本以外にはない。

構造や素材に加え、表面の形状も大きく進化している。

業界最大手の日之出水道機器(福岡市)はブリヂストンからの技術協力で特殊な凸凹加工(ASD)を施したマンホールの蓋を開発した。タイヤのグリップ力を高めるメカニズムを応用し、スリップの原因になる水や砂を効率よく排出できるようにした技術。これにより、雨や砂でスリップするのを防ぐことができ、「アスファルトの上と同じ感覚で走れる」という。

こうした日本で独自に発展した高度技術は「今後、急速に経済成長するアジア市場などに売り込める可能性がある」と業界関係者は夢を膨らませる。決して「ガラパゴス」ではないのだ。

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
次のページ
東京がない「帝大」、「荒玉水道」に歴史
エンタメ!連載記事一覧