保育園入園活動で「1勝30敗」 認可枠争奪に苦悩

安倍政権が発足して10カ月。保育需要がピークを迎える2017年度までに待機児童をゼロにする――。異例のデッドラインを設けて官民が動き始めた。保育園整備に加えて、働き手の要望や企業の工夫、規制緩和のあり方まで絡む難しいパズルをどう解くか。それぞれの現場を訪ねた。

2人暮らしで…

仕事帰り、松本さんは娘を迎えに行く。保育園は自宅と職場とは異なる区にある

「先に申込みされました児童の入所申込みにつきましては、下記の理由によりすぐに保育の実施をすることができませんので通知します」

「不承諾理由 空きなし・募集数に対して入園希望者が多いため」

東京都杉並区に住む松本千絵さん(43)は、区役所からの薄い封筒が届くたびに憂鬱になる。2歳の長女が1歳の時から計3回、第5希望まで申し込んだ認可保育園には入れなかった。都が独自制度で設ける認証保育園からも連絡はない。今年4月に出産から1年9カ月の休暇を経て職場復帰したが、娘は認可外の保育園に預けるしかなかった。出勤と帰宅の途中に、渋谷区の園に送り迎えする。

博報堂に勤める松本さんはフルタイムで働く。夫は大阪勤務になったので、今は娘と2人暮らし。「保育の必要性は他の子より高いはず。認可に必ず入れる」と考えていた。保育園不足が叫ばれる時代、それなりに「保活」もしたつもりだ。生後6カ月から区の担当者に相談。万が一に備えて、まだ歩けない娘を抱えて認証園の見学と申し込みを繰り返してきた。

保育園入園は申込書をいくつかの基準に従ってポイント化し、高い順に決まるといわれる。保活を通して、夫の単身赴任は入所判断の際の加算ポイントにならないと知った。周囲の母親はポイントを稼ぐために短期間でも認可外に預けた実績をつくり、数カ月でも早く復帰して「印象点」を積み重ねていた。

保育料は月9万円。認可なら5万円台で済み、送迎の負担も小さかった。一番つらいのは「不承諾の理由が不透明で、はっきり教えてもらえないこと。もう何をすればいいか分からなくて」。認証園には3カ月ごとに再申請するが「空きが出たら連絡する」と言われるだけ。認可と認証合わせた保活は、のべ「30敗」。認可外の「1勝」に感謝しながら、娘を園庭のある保育所で遊ばせたい一心で、今も認可に申し込む。

5月に「待機児童ゼロ」を達成したと発表し注目を集めた横浜市。同市青葉区に住む氏次明弓さん(38)は、現在1歳の次女が4月、長女と同じ認可園に入れてほっとしている。

当初は1日7時間の短時間勤務での復帰を考えていた。希望の保育園に兄姉がいると入所に有利に働くのが常識。だが、2月の1次選考では不承諾の通知が届いた。すぐ区役所に理由を尋ねると「あなたはABCD4段階のBランク。Aの方だけで定員を超えました」と言われた。「Aに入るためにはフルタイム勤務をするしかない」と考えた。会社の人事担当に「大丈夫?」と心配されたが、働き方を急きょ変更した。

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育休3年なんて