のんびり晩酌 昼まで寝坊… 昭和の夫になりたい
なぜオヤジが2人…
妻と2人で「プシュッ」と晩酌の缶ビールを開けた瞬間、約30年の思い出が走馬灯のように駆け巡った。
新婚時代、妻は最小サイズの缶ビールをたまに飲む程度だった。私は500ミリリットル缶を1~2本。やがて子どもが成長し、社会人となった今、妻が飲むビールは350、500ミリリットル缶に。しかも2本立て続けにということが珍しくない。アルミ缶の回収日、膨れ上がったゴミ袋を運ぶ私の歩調は駆け足に近い。
「オヤジが2人いるようだ」。そう思い始めたのは10年ほど前から。妻の仕事が多忙になり、加齢で無理もきかなくなった。一方で同居する義母は、片道1時間かけて職場に通う娘に代わり、食事を作るのが使命と考えているフシがある。しかも料理の腕はプロ級だから「お母さん、お願い」と妻。もはや炊事を放棄した感がある。
私の趣味はキャンプで、アウトドア料理は大体こなす。しかも単身赴任を経験したから、今や料理のレパートリーは私でさえ妻より広い。「嫁入り前に料理は必ず教えます」。分厚い料理本を見せ、義母が私に約束したのは幻だったか?
義母の料理をつまみにビールを飲む妻の姿が、オヤジの分身に映る。今夜も。
目覚ましのない幸せ
「ママ、もうお昼だよ」。パジャマで目をこすりつつ時計を見るともう12時。半ばあきれつつ、子どもに指摘される土曜日か日曜日が、数カ月に1度ある。単身赴任中の夫が家に戻ってきた休日は至福の時だ。
普段は父親兼母親。だから子どもにあれこれ注意したり時にほめたり忙しい。弁当を詰めたり掃除をしたりと家事も1人でこなし、遅刻しないように家を出る。休日も子どもの登校や習い事で朝6時30分起きは変わらず、疲れがとれない。
だが、夫が家にいれば話は別。朝、そっと起きて子どもの朝食を用意してくれるので、私はいつまでも眠っていられる。目覚まし音のない朝ほどぜいたくなものはない。
はて、どこかで見た光景だと思えば、かつての自分の父親の姿だった。付き合いゴルフで日曜日もいなかったが、たまに家にいるとぐうぐう寝ていた。「疲れているのよ、静かにね」といっていた母の言葉を今、夫が子どもに言っている。
主婦は疲れがたまりやすい。働く妻も疲れる。時に昭和のオヤジにでもならないとやっていけない。平成の夫もいいたいことはあるのだろうけれど……。
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