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親の介護で未来を奪われる若者 ある20代の場合 晩産化・ひとり親…増加の兆し

2014/6/17

親や祖父母の介護に追われる10~20代の若者がいる。学生生活に支障が出たり、就職をあきらめたり、自分の将来を描くこともできず、日々を過ごす。ひとり親家庭の増加や晩産化で、こうした若者はさらに増えると見込まれている。苦闘する彼らの暮らしを追った。

■父が50代、若年性認知症に

父親の介護は終わったが、山口さんは今も祖母の成年後見人として介護や財産管理などを担う

「帰ってきた父は玄関が分からず、鍵のかかっている勝手口をこじあけようとしていた。しゃべる言葉も意味不明。父は病気なのだと実感し、守る覚悟ができた」

東京都内で家庭教師をしている山口尚成さん(29、仮名)は、23歳だった2008年の出来事を振り返る。50代後半だった父親は若年性の認知症で、発症から3年たっていた。介護にすべてを費やすと覚悟できたのは、その時だった。

電化製品の設計をする会社員だった父が、05年に認知症を発症した当時、尚成さんは大学生だった。物忘れがひどくなった父は休職になり母親が働きながら、介護をすることに。それでも当初は、学生生活に支障はなかった。

■システムエンジニアの夢は断念

だが、1年、2年と病気は進行。父は言葉をかけても反応しなくなり、直前の物事も記憶できなくなった。つきっきりで介護せざるをえず、自然と仕事がある母親ではなく尚成さんの出番が増える。

ちょうど大学4年の就職活動の時期だった。友人たちが熱心に企業訪問をしているのに尚成さんはできない。「なぜ自分だけ……」。しかも同居の祖母まで認知症となり介護の負担はさらに増す。

「システムエンジニアになりたかったが、あきらめるしかなかった」

子が親の介護をするのは「当然」。だが、20代前半の若者が就職を断念するなど、急変する自分の運命を受け入れるのは簡単ではなかったはずだ。

■壮絶な日々 おむつ交換で始まる1日

介護は壮絶を極めた。1日の始まりは父が起床する朝6時。おむつ交換をして朝食。父は半分くらいまで食べるが、残りは尚成さんか母親が口元まで運ぶ。それを一日に3回繰り返す。

朝食後はデイサービスに連れて行くか、家で見守る。ふらふら歩き回る父を、割れ物がある台所などに近づかないように、付いていなければならない。厄介だったのは、おむつの交換だ。交換がうまくいかないと爪を立て、殴りかかってきた。突然、祖母と怒鳴り合いをすることも。父はまだ若く体力があるので、何かあった時にやめさせるのは簡単ではなかった。

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