愛情と元気を注入 おやつに食べたいクリームパン

●ちなみに――先祖はシュークリーム?

クリームパンは明治時代に生まれた

今や日本のパン店に当たり前のように置いてあるクリームパンは、いったい誰が作りだしたのか。「たべもの起源事典」(東京堂出版、2003年)によれば、明治時代に東京都新宿区の「中村屋」が創作したのが元祖。その開発のヒントになったのは、当時はまだ珍しかった洋菓子のシュークリームだという。カスタードクリームと柔らかな生地の調和が生み出すおいしさを、パンにも取り入れられないかと試行錯誤の末に生み出されたのが、クリームパンの原型らしい。

クリームパンといえば、野球のグローブのように横長で部分的に切れ目が入った独特の形状を思い浮かべる人も多いだろう。なぜ、この形に落ち着いたのかは諸説がある。有力な説は、焼き上げの時にクリームとパン生地の間に隙間ができやすいため、切り込みの入ったグローブ形とし、空気を抜いたというもの。だが、あんパンなどほかの菓子パンとの区別をするための工夫だとの説もある。クリームパンは食べる前に、まずその形状や垣間見えるクリームの由来に思いをはせてみる。そうすれば一段と深い味わいが楽しめるかもしれない。

●記者のひとこと――よみがえった幼少期の記憶

今回のテーマを聞いた時、よみがえったのが保育園に通っていた30数年前の記憶だ。当時、パンとは食パンのことと思い込んでいた私は、初めてあんパンを一口食べ「この世にこんなおいしいパンがあるのか」と心から感激した。ところがその数日後には、クリームパンを買ってもらって再び「おいしい」と仰天。今思えばそれが深い悩みの始まりだった。あんパンか、クリームパンか。パン店やスーパーの売り場で立ち尽くして迷った幼い日が懐かしい。

最近はどうか。今も菓子パン好きに変わりないが、どちらを選ぶか悩む時間は減った。食べたいパンを一気にまとめて「大人買い」してしまうからだ。それをやり過ぎると、体重の増加という別の悩みが生じるのはわかっているが……。やめられない。

(堀大介)

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●専門委員の横顔(五十音順)

下井美奈子さん

1973年生まれ。実家の母が菓子教室講師ということから、子どもの頃からスイーツの食べ歩きや菓子作りを行う。一般企業を退職した後、パリの料理学校「リッツ・エスコフィエ」で料理・製菓の資格取得。またパリの製菓料理学校「ル・コルドン・ブルー」「ルノートル」で学び、2年間のロサンゼルス在住中にも各国の製菓・料理を習得。情報サイト「オールアバウト」では立ち上げの2001年から、スイーツガイドを担当。多数のメディアで洋菓子情報を紹介するほか、商品開発、レシピ提供を行うスイーツコーディネーターも務める。共著に「TOKYO美食パラダイス」など。

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心とした菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べる菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。