出産・介護…人事面談、家庭の事情どこまで聞ける

仕事の成果やキャリアプランについて話し合う人事面談。ワークライフバランス(WLB)が重視されるなか、出産や育児、介護といった家庭の事情も重要なテーマとなる。会社は人材育成を計画的に進めるためにも詳細な情報を得たいが、不用意に私的な領域に踏み込むのはトラブルのもと。プライバシーの問題とどう折り合いをつけるのか、WLB時代の人事面談を探った。
P&Gジャパンでは、決められた面談以外にも、上司と部下が積極的にコミュニケーションをとる場を設けている。

「探り」に不快感

「子どもは4歳だっけ。かわいい盛りだね。2人目は考えたりしている?」。東京都に住む会社員の女性(37)は、人事面談で上司にこう言われて驚いた。面談用のシートには、キャリアプランとして現在の営業職を続けたいと書いただけで、子どもの話には何も触れていない。

その場では上司に「うーん、どうですかね」と曖昧に返答したが、世間話に挟み込んだふりをしながら探りを入れられていると感じた。かつて職場で別の女性が急に産休に入った際、人繰りに苦労した過去が上司の質問の背景にあるように思えた。

今のところ2人目の予定はないが「これから考えが変わることもある。『もう30代後半だから生まないよね』と言われているようで嫌だった」と振り返る。

こうした直接的な言い回しではなくても、どうにかして情報を聞き出そうとするケースもある。

ある大手サービス業の人事担当者は「結婚や出産の予定、退社の意思など、本人に聞くのが難しい場合、同僚などからそれとなく情報を引き出している」と明かす。この企業は女性比率が高く、十数人の職場で結婚や出産などが重なって一度に4、5人が抜けたことも。「適切な人材配置を考えると、こちらから色々と踏み込んでいかざるを得ない」との考えだ。

ただ、会社側から家庭の事情を尋ねるのはプライバシーの関係上、難しいところ。となれば、いかに社員の方から話を切り出してもらえるかも重要になる。

保育大手のポピンズ(東京・渋谷)は、直属の上司以外とも面談する機会を設けている。担当するのは、現場の責任者や人事部の労務担当など様々で、前もってシートに記入するキャリアプランの中身に応じて決める。ナーサリー人事部の横野泉さんは「直属の上司に面と向かっては言いにくい声も、くみ取ることができる」と話す。

強制ではないものの、出産の計画や病気の状況など、具体的に書き込む人は多いという。シートに記載例はない。自由記入欄を広く設け、個人の事情に応じて気軽に書けるよう工夫している。

昨年出産した30代の女性は「出産の計画などを積極的に書き込んだことで、スムーズな育休の取得や復帰にもつながった」と喜ぶ。次の面談の際は、2人目の計画なども記入するつもりだ。

「最近は子どもができず、子づくりに専念するために会社を辞めたいという相談も多い」と横野さん。同社ではこうした悩みも早めに把握し、短時間勤務などの制度利用を促すことで、不安の解消に努める。保育所の増設ラッシュによる人手不足の解消が課題の業界。保育士は女性が9割以上で、結婚や出産を機に辞めるケースも多いだけに「きめ細かいフォローが人材の定着につながる」というわけだ。

社員が話を切り出しやすくするには、上司も普段から雰囲気づくりに気を配る必要がある。ある30代の男性会社員は、面談で育休取得について相談ができなかった。上司は酒席などで男性の育休について否定的に語っており「下手に聞くと人事に影響する」と考えたからだ。「面談で『何でも思うことを話してくれ』と言われても、なかなか信用できない」と明かす。

そもそも、異動などに家庭の事情を可能な限り反映させる仕組みを整えることで、人事面談でも相談しやすい環境を整えている企業も。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)・ジャパン(神戸市)は、その一例だ。

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