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お墓の新しい形 跡継ぎ不要、自然に還る 木や花が墓標「樹木葬」広がる

2014/7/15

親や自分の墓は誰が守るのか。子や親族に負担をかけたくない人や単身の高齢者の増加で、墓の風景が急速に変わり始めた。木や花を墓標にする「樹木葬」の広がりはその一つ。墓参りや管理の代行サービスを活用する人も珍しくなくなりつつある。変わる墓参りの風景を2回にわたり紹介する。
東福寺塔頭(たっちゅう)即宗院の樹木葬墓地「自然苑」(京都市東山区)

樹木葬は墓地として認可された場所に、木々や植物を墓標にして遺骨を埋める葬り方。個人や家族、友人と一緒に同じ木の下に埋葬するものや、大勢で合葬するものもある。骨つぼを埋めるところもあれば、遺骨を袋や紙に包んで葬るケースも。共通するのは、従来の墓と異なり次世代への継承を前提としない点だ。

家の墓は親から子へと代々受け継がれるものだったが、近年は少子化や核家族化で、継ぐ人がいなかったり、遠方の墓を守ることが困難になったりするケースが増えている。木々を墓標にする樹木葬は建設費がかからず、維持管理コストも低い。自然志向や墓に個性を求める人のニーズに合致した新しい墓として注目されている。

「夫は海に散骨してほしいと言っていたが、それはしのびなかった。樹木葬の墓地を何カ所か見て、ここなら夫も気に入ると思った」と話すのは、東京都に住む岩田佳子さん(仮名、59)。61歳でがんで亡くなった夫は、余命宣告を受けた後、兄から都内にある家の墓に入るようにすすめられたが、望まなかった。

岩田さんが申し込んだのは紅葉の名所として知られる京都市の東福寺の塔頭(たっちゅう)、即宗院が設けた樹木葬墓地。夫は京都で勤務したことがあり、家族で神社仏閣巡りをしたことを懐かしく思い出していたという。

即宗院では無縁化が進んだ墓所を整理し、2011年に樹木葬墓地を造った。杉井玄慎住職は「亡くなった夫の葬り方に悩む女性の相談にのったのがきっかけ。墓を継ぐ人もなかったので無縁墓にならない仕組みを考えた」と振り返る。現在60人以上がコクマザサの茂る緩やかな斜面に眠る。

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従来の墓は広さや運営主体によるが、土地を取得して建立すると100万~300万円かかるとされる。供養・仏事の調査・相談を手掛ける鎌倉新書によれば、13年に同社サイトに問い合わせて墓を購入した人の価格(墓石建立費用+永代使用料)で最も多かったのは「150万円以上200万円未満」。平均211万円だった。

樹木葬墓地も費用は様々だが、10万~60万円程度(1人利用の場合)ですむところが一般的。京都市の西寿寺は13万5000円から、公営でも10万円台からが多い。しかも、掃除や手入れなどは管理者がやってくれる。寺の中であっても一般に宗派は問われず、檀家になる必要もない。継ぐ人がいなくても、安心できる面があるのは確かだ。

国内では1999年に岩手県一関市の寺が開設した樹木葬墓地が第1号とされる。その後、各地に広がり、現在は全国20~30カ所といわれるが、実際の需要はそれ以上に高まっている。

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