テストコースで試乗した「ナノ」。寸胴型の外見が特徴

意外に広い内部、軽快な走り

生産ラインの見学を終えると、隣接するテストコースで「ナノ」に試乗した。

炎天下だったが、人工池が見える広々とした直線のテストコースには涼しい風が吹き付けている。試乗したのは青い「ナノ」。タタ自動車の関係者3人とともに車内に乗り込んだ。外見はずんぐりむっくりした寸胴型。「車内の広さを確保できるようにパッケージを重視した」(ラタン・タタ名誉会長)ためだ。

サイドミラーは運転席側に1つ付いているだけ。ワイパーも1本。エアバックやアンチロックブレーキシステム(ABS)などもすべて省略されている。メーターも速度計、走行距離計、燃料計のみ。コストダウンを実現するために、外観は相当にシンプルだ。

だが内部は思ったよりも広く、安っぽいという感じはそれほどしない。キーを回すと、小気味よい金属音とともにエンジンが始動した。いよいよ出発だ。直線コースでアクセルを踏み込むと、「ナノ」は力強く加速した。大の男が4人乗った状態だが、排気量624ccとは思えないほど軽快な走りだった。60キロくらいまでならすぐに加速できた。

テストコースは直線だけなので街中での急発進、急停車や右折、左折など小回りの性能はあまり確認できなかった。だが、ハンドル操作はそれほど重くなく、使い勝手はかなり良さそうだった。この大きさだと高速道路を何時間も走り続けるような長旅はさすがに疲れるかもしれないが、買い物など近場の移動には大いに重宝しそうだ。なによりも新車でこの安さだから、バイクしか購入できない層には魅力的な選択肢になりそうな気がする。

将来は2輪から4輪への乗り換え層に期待

とはいえ、インドではガソリン価格の高騰などを背景に「これらの購買層がバイクから4輪に移行するのをためらっている傾向がある」(タタ自動車)という。インド自動車工業会(SIAM)によると、国内の乗用車市場はここ数年伸び悩んでおり、ライバルとの競争激化から、特にタタ自動車のシェア低下が目立っている。

そこで目下、タタ自動車では装備を充実した追加モデルを投入するなどテコ入れに躍起。都市部の若者を対象にした売り込み戦略に切り替えつつある。

ただ、多少の曲折はあるとはいえ、国内経済の発展に伴い、12億人超の人口を抱えるインドの庶民の生活水準は確実に上昇している。やがて、巨大な2輪の購買層が一斉に4輪に乗り換える時には、桁違いのビジネスチャンスが生まれるに違いない。

果たして、その波をうまくつかめるのか? 今後の「ナノ」の販売動向に注目したい。

ちなみに、タタ自動車は東南アジア、アフリカ、南米などへの「ナノ」の輸出には意欲を見せるが、日本への輸出は今のところ予定していないという。

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