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印タタ自動車工場ルポ 「ナノ」に試乗してみた

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

昨年から今年にかけて、インド最大財閥、タタ・グループのラタン・タタ名誉会長に何度か会う機会に恵まれた。その過程で「10万ルピー(約17万円)の世界最安車」と報じられて話題になった「ナノ」の専門工場を視察することができた。

「ナノ」の発売は2009年。以来、思うように売り上げが伸びず、現時点ではメディアがタタ自動車を取材するのはなかなか難しい状況が続いている。だが、名誉会長から特別に取材が認められ、工場内の視察のほか、テストコースで「ナノ」に実際に試乗できることになったのだ。

そこで今回はインド西部グジャラート州サナンドにある「ナノ」の専門工場の現地ルポをお伝えする。

10万ルピーは出荷段階、標準タイプで価格は15万ルピー強

「ナノ」は4人乗り。排気量624ccの直列2気筒エンジンを搭載し、最高時速は105キロ。インドでは「ワンラック」が「10万」を意味するため、「ナノ」は「ワンラックカー」と呼ばれている。

ただこれはあくまでも工場出荷段階での価格。諸経費などを加えると実際に客が支払う価格はもう少し高い。様々な条件によって異なるが、たとえばムンバイに住んでいる場合、標準タイプで15万6028ルピー(約26万円)という設定になっている。

名誉会長自らが開発に参加

「ナノ」はバイクしか買えない新中間層でも手が届く初の「国民車」として生産された。

同プロジェクトはラタン・タタ名誉会長が自ら開発に参加し、既存の自動車の概念を根本から見直し、徹底したコスト削減に成功したことで知られる。

「ナノ」専門工場の誘致は、当時のグジャラート州の首相で今年5月の総選挙で大勝してインドの首相に就任したナレンドラ・モディ氏が、ラタン・タタ氏に熱心に働き掛けて実現したとされる。

それでは視察の様子を再現してみよう。

私が滞在したホテルはアーメダバードの空港近く。工場までは約50キロ。車で約1時間ほどの道のりである。アーメダバード中心部から工場までは高速道路(17号線)が走っている。見渡す限り田園地帯が広がっているのんびりした郊外の風景を眺めながら工場に向かった。

街角の所々にナレンドラ・モディ氏のポスターが貼ってある。モディ氏はインフラ整備や有力企業の誘致を軸にした経済振興策で実績を残しており、地元には熱狂的な支持者が多いようだ。

最大生産能力は年25万台

高速道路を西に走らせて約1時間。突然、左手に真新しい大きな「ナノ」専門工場のゲートが姿を現した。タタ・グループのイメージカラーである青い下地に「TATA MOTORS」というロゴが輝いている。入り口付近には従業員を運ぶための大型バスが数十台も駐車してあり、その車体には「INDIA'S PRIDE(インドの誇り)」というスローガンが大きく描かれていた。

広々とした工場の敷地は1100エーカー(445万平方メートル)。西側の「ナノ」工場部分(750エーカー)と東側の納入業者部分(350エーカー)との2つに分かれている。周囲には緑地や沼地、田畑などが広がっている。敷地は州政府がタタ自動車の工場誘致のために手当てしたという。

私が視察できたのは西側の「ナノ」の工場部分。まず会議室で関係者からスライドやビデオで簡単な説明を受けた後、早速、生産ラインを見学させてもらった。「今回のようにメディアに工場内を公開するのは極めて珍しい」と広報担当者はいう。

タタ自動車によると、「ナノ」の生産ラインは「プレス」→「溶接」→「塗装」→「パワートレイン」→「組み立て・仕上げ」→「検査」の工程で成り立っている。最大生産能力は年25万台。だが、この5年間の累積販売台数は24万台にとどまっており、当初見込みの1年分にも満たない状況が続いている。そのせいか、工場が稼働している時間帯は限られているようだ。

生産ラインには「KOMATSU」の文字も

工場内を視察するための専用車に乗り込み、まず「プレス」の工程から見学を始めた。「KOMATSU」というロゴがついた大型機械が生産ラインに導入されているのがすぐに目に入った。日本メーカーの技術がここでも生産の基礎を支えているようだ。

工場内はやや暑いが清潔でとても明るい雰囲気。生産ラインの上を組み立て中の「ナノ」がゆっくりと移動し、その回りで従業員がテキパキと作業に取り組んでいる。産業ロボットのアームが音もなく動いている場所もある。若い研修生を訓練する特別なセクションもあるようだ。

「ここで働く従業員は約4200人。皆、厳しい審査をパスした優秀な人材ばかりです。インドの国民車をつくるんだという誇りを持って仕事に取り組んでいます。工場ができたので地元住民は大変に喜んでいるんですよ」。ヘマント・クルカルニ工場長はこう話してくれた。工場内にはスポーツチームがいくつも結成され、福利厚生施設も充実しているようだ。

「溶接」→「塗装」→「パワートレイン」→「組み立て・仕上げ」と順番に視察したが、工場内はとても静かで心なしか働いている従業員が少ないという印象を受けた。生産量がまだ目標水準に達していないせいかもしれない。

生産ラインの最終段階にあたる「検査」の部分では、白く車体を塗装されたピカピカの「ナノ」が1列に並んで出てきた。検査のためか、ヘッドライトを点灯させている。ここで完成した「ナノ」がやがて全国に出荷されるのだ。

生産ラインを一通り見学するのに結局、3時間ほどかかった。

意外に広い内部、軽快な走り

生産ラインの見学を終えると、隣接するテストコースで「ナノ」に試乗した。

炎天下だったが、人工池が見える広々とした直線のテストコースには涼しい風が吹き付けている。試乗したのは青い「ナノ」。タタ自動車の関係者3人とともに車内に乗り込んだ。外見はずんぐりむっくりした寸胴型。「車内の広さを確保できるようにパッケージを重視した」(ラタン・タタ名誉会長)ためだ。

サイドミラーは運転席側に1つ付いているだけ。ワイパーも1本。エアバックやアンチロックブレーキシステム(ABS)などもすべて省略されている。メーターも速度計、走行距離計、燃料計のみ。コストダウンを実現するために、外観は相当にシンプルだ。

だが内部は思ったよりも広く、安っぽいという感じはそれほどしない。キーを回すと、小気味よい金属音とともにエンジンが始動した。いよいよ出発だ。直線コースでアクセルを踏み込むと、「ナノ」は力強く加速した。大の男が4人乗った状態だが、排気量624ccとは思えないほど軽快な走りだった。60キロくらいまでならすぐに加速できた。

テストコースは直線だけなので街中での急発進、急停車や右折、左折など小回りの性能はあまり確認できなかった。だが、ハンドル操作はそれほど重くなく、使い勝手はかなり良さそうだった。この大きさだと高速道路を何時間も走り続けるような長旅はさすがに疲れるかもしれないが、買い物など近場の移動には大いに重宝しそうだ。なによりも新車でこの安さだから、バイクしか購入できない層には魅力的な選択肢になりそうな気がする。

将来は2輪から4輪への乗り換え層に期待

とはいえ、インドではガソリン価格の高騰などを背景に「これらの購買層がバイクから4輪に移行するのをためらっている傾向がある」(タタ自動車)という。インド自動車工業会(SIAM)によると、国内の乗用車市場はここ数年伸び悩んでおり、ライバルとの競争激化から、特にタタ自動車のシェア低下が目立っている。

そこで目下、タタ自動車では装備を充実した追加モデルを投入するなどテコ入れに躍起。都市部の若者を対象にした売り込み戦略に切り替えつつある。

ただ、多少の曲折はあるとはいえ、国内経済の発展に伴い、12億人超の人口を抱えるインドの庶民の生活水準は確実に上昇している。やがて、巨大な2輪の購買層が一斉に4輪に乗り換える時には、桁違いのビジネスチャンスが生まれるに違いない。

果たして、その波をうまくつかめるのか? 今後の「ナノ」の販売動向に注目したい。

ちなみに、タタ自動車は東南アジア、アフリカ、南米などへの「ナノ」の輸出には意欲を見せるが、日本への輸出は今のところ予定していないという。

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