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デザイナー50年回想「運命を分けた決断」 芦田淳

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

会社創立から今月4日でちょうど50年。ファッションデザイナー、芦田淳氏は同日付で社長から会長に退き、社長に昇格した娘婿の山東英樹氏に経営の実務を任せる新体制を発足させた。皇太子妃、美智子さま(現皇后)の専任デザイナーを務め、アトランタ五輪の日本選手団公式ユニホームのデザインも手掛けてきた同氏は、過去50年の自らの足跡について「ファッションビジネス界で生き残るための運命の決断があった」と振り返る。

 ――「ジュン アシダ」の社長から会長に退いた理由は。

「会社創立50周年を機に経営の実務を(後継デザイナーの)次女の多恵の婿、英樹君に任せることにした。これは既定路線。彼は日本興業銀行(現みずほ銀行)出身で経理に明るいし、すでに経営のかなりの部分を任せてきたので、直ちに何かが大きく変わるというわけではない。

ただ、私の負担が少しでも減れば、その分デザイナーの仕事に専念できる。私も今年で83歳になり、さすがに体力も落ちてきたが、服作りへの情熱はまったくなくなっていない。この情熱がある限りデザイナーの仕事は続けたいと思う」

 ――過去50年を振り返って、最も印象深い思い出は何か。

「思い出は多いが、やはり皇太子妃、美智子さまの専任デザイナーをさせていただいたことが記憶に鮮明に残っている。身に余る名誉な仕事だったし、素晴らしい経験になった。初めて東宮御所に伺い、美智子さまにお目にかかった時の感動は今でも忘れられない。外交の舞台での服装は多くのメディアの目にさらされ、細かな決まり事もたくさんあるので神経を使った。季節や気候、出掛ける場所の文化などにふさわしく、美智子さまの美しさを引き立てるための服作りに全力で取り組んできた。そのことが自分にとって大変に勉強になったと思う。デザイナーとしての自信と信頼を与えていただいたと感謝している」

 ――浮き沈みが激しいファッションビジネス界では、大手資本に買収されたり、経営破綻したりするブランドも少なくない。

「50年前、東京・渋谷に部屋を借りて社員10人で会社を創立したころは無我夢中だった。東京五輪の前の年。高度経済成長のさなかのことだ。今思い返しても懐かしい。高島屋の顧問デザイナーを務めながら、日本のファッション界の未来について熱く議論したり、パリなど欧州に2カ月の視察旅行に出掛けたり、がむしゃらに働いた。その小さな会社が今では年商93億円(2012年8月期)、社員370人に成長したのだから、夢のような話だ。でも、これまでの道は決して平たんではなかった。実は運命を左右する大きな決断があった。1979年のことだ。この決断をしたからこそ、厳しいファッションビジネス界で生き残れたのだと自負している」

――その運命を分けた決断とは。 

 「パリ・コレクションからの撤退だ。77年春、私はパリ・コレでショーを始めた。やはり、世界のファッションをリードするパリはデザイナーにとって大きな目標だったからだ。当時は日本人デザイナーがパリ・コレに続々と参戦している時期。私もこの流れに乗り遅れまいとパリの高級ホテルやナイトクラブを借りて、メディアの関心を集めようと派手なショーを開いていた。メディアの評判も上々だった。『日本の皇室から飛び出してきたデザイナー』などと大々的に報じてくれた。でも、どうしても気持ちがしっくり来なかった。最初から違和感がぬぐい去れなかった」

 ――メディアには高評価だったのに、どうして不満だったのか。

「実際のビジネスになかなか結びつかなかったからだ。欧米メディアは、東洋色を過剰に強調した作品や、とても町では着られないような奇抜な作品ばかりを盛んにもてはやしていた。私も赤いちりめんの布に家紋などを描いたドレスを作ってみたが、まったく注文が入らない。メディアが評価しても、お客さんが欲しいものではなかったのだ。

しかも1回のショーで材料費、人件費などを含めて数千万円以上はかかる。ショーは春と秋の年2回。おカネをそのままドブに捨てているようなものだと感じた。スタッフもパリに大勢駆り出されるので肝心の日本のお客さんへの対応がおろそかになりかねない。そこで通算5回のショーが終わった時点でパリ・コレから撤退することにした」

 ――時代の流れに逆行する決断だったが、ためらいはなかったか。 

「負け惜しみに聞こえるかもしれないが、未練はまったくなかった。やせ我慢してショーを続けても経営を圧迫するだけ。代わりにそのお金でパリの一等地、フォーブル・サントノーレに直営ブティックを開いた。店の方がショーを開く以上に大きな宣伝効果があるし、実際に買って着る客の声も直接聞ける。これならおカネの使い方に意味がある。

 私はそもそも武骨な男だから、地に足が着いていないとどうしても落ち着かない。会社の足場である日本を中心にしっかりビジネスを固めようとうまく気持ちを切り替えた」

 ――ブランドビジネスでは経営と創造の両立が常に課題。うまくいかないと経営が行き詰まってしまう。

「デザイナー兼社長だった私は、デザイナーの感覚と経営者の感覚が頭の中でうまく両立できていたと思う。さらに、服を着る女性の視点から、素材の選定やMD(商品政策)を担当してきた妻、友子に支えてもらったことも大きかった。今でも年2回、東京でショーを続けているが、好きな服作りに専念できるのは幸せなことだ。(後継デザイナーの)娘と(新社長の)婿の時代には、経営と創造が分離した体制になる。夫婦二人三脚で呼吸を合わせながら、時代の波をうまく乗りこなしてほしい」

芦田淳氏から「ジュン アシダ」の経営を引き継いだ新社長の山東英樹氏に、今後の会社のかじ取りや経営理念などについて聞いた。

 ――現在の会社の経営状態をどう見ている。

「2008年秋のリーマン・ショックの影響もあり、年商は08年8月期の123億円から12年8月期には93億円にまで減少した。地方の専門店への販売などが減ったためだ。そこで社員からのボトムアップ方式で経費削減のアイデアを提案してもらいながら、経費をだいぶ削減した。今でも無借金経営が続いており、社員数はそれほど変化していない。今後、景気動向に左右されない企業体になるためには、やはりものづくりが基盤になる。それには縫製の技術者も販売員も経験を積んだ人材が欠かせない。社員を大切にする会社にしたい」

 ――そのための具体策は。

「我が社では社員の8割以上を女性が占める。そのため出産休暇、育児休暇、短時間勤務、介護休暇などの制度を充実させてきた。特に短時間勤務では子どもが小学校に入学するまで1日2時間の労働時間短縮を認めている。だから、多くの女性社員が我が社で働き続けており、最も長くて48年間も勤務している女性幹部がいるほど。日本では家庭の子育てや介護が女性の大きな負担になっている。でも、せっかく身に付けた社員の高い技術や知識をいかすためにも、できるだけ働きやすい環境になるように支援したい」

 ――後継デザイナーの芦田多恵氏のブランドの状況はどうか。

「全社の売上高の6割強が父の芦田淳のブランド、4割弱が多恵のブランドという状態。昨年秋、多恵のコレクションラインやブティックの名前を『ミス アシダ』から自らの名前を前面に掲げた『タエ アシダ』に切り替え、商品が出回る今春から看板やロゴも刷新した。主要顧客層は30~40代。基本は日本市場に注力している。輸出は今のところパリのブティックに商品を供給しているだけ。今後も地道に足場を固めたい」

 ――信条や夢は。

「座右の銘というほどではないが、『運、縁、恩』を大切にする人間でありたいというのが私の信条だ。また、それを実践できる会社にしたいと思っている。高校生のころはなぜか家の間取り図を書くのが好きで、将来は建築家になりたいと考えた時期もあるし、興銀を辞めてからは叔母の公設秘書として働き、選挙を手伝った経験もある。とにかく日々勉強。諸先輩たちの経験や知識をお借りし、社員がやりがいを感じて楽しく働ける会社にしたい」

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