定期的にあげる小遣いは、十円がたまって百円になり、千円になりとお金のありがたみを感じられた。だが、今は、使い放題になりかねない電子マネーが与えられる時代。「これではお金には限りがあるから大切にしないといけないという感覚が育たない」と八木さんは強調する。
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もちろん、電子マネーを持たせないという選択もある。だが、特定非営利活動法人(NPO法人)金融知力普及協会の鈴木達郎事務局長は「むしろ使い方は積極的に教えた方がいい」と否定的だ。「失敗もするだろうが、早いうちから慣れさせると、使いこなせるようになる。親がいい形で導くことが大切」と語る。
大阪府豊中市の馬橋美子さん(仮名、40)は昨年、10歳の長女に、電子マネーデビューをさせた。月々の小遣い4百円は現金で、文房具代は半年分千円をエディで渡し、それぞれ小遣い帳につけて、やりくりさせている。
ほしい文房具が100円ショップにあるが、エディが使えないような時に「エディの使えるコンビニの値段と比べて、相談してくるようになった。お金の上手な使い方を考えるようになってきた」と、娘の成長ぶりに馬橋さんは声を弾ませる。
肝心なのは親が変わりゆく子どもの財布事情としっかり向き合うこと。電子マネーを使うのは交通費のみ、履歴を必ず確認するなど、5つのルール(右表)を親子で決めることを八木さんは提案する。参考にしてみてはいかがだろう。
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ベネッセコーポレーションが昨年10月、同社が運営する教育情報サイトのメンバー約2600人に聞いたアンケートによると、子に定期的に小遣いを与える親の割合は、子が小学1年の場合、22.5%。学年が上がるにつれ高まり、中学3年では66.7%に達した。
ただ、それでも3人に1人は定期的な小遣いをもらっていない。ほしいものがある時に親が不定期にお金をあげるか、お年玉や祖父母からもらうお金などに頼っているようだ。
小遣い問題に詳しい横浜国大の西村隆男教授は、生活が豊かになったことや、少子化で祖父母からの小遣いが増えたことで「月々きちんとお金を与える家庭や、小遣い帳をつける子どもが20年前に比べかなり減っている」と推測している。