わが子の財布が見えない電子マネーが変える子どもの小遣い事情

わが子の財布がどんどん見えなくなっている。タッチするだけで支払いが完了する電子マネーが急速に普及。子どもの世界にも使った金額を実感しにくいサービスが広がり、金銭感覚に異変が起きる。小遣いの百円を握りしめ、駄菓子屋であれかこれかと悩む姿は遠い昔。いまどきの子どもたちの財布事情を探る。

電子マネーを子どもの小遣い管理に使う家庭もある(大阪府豊中市)

千葉県船橋市に住む斎藤雅子さん(48)が、中学1年だった長男の言葉に引っかかったのは昨年のこと。

「野球部の先輩におごってあげたんだ」

おごるお金なんかないはずなのに……。問い詰めてみると“原資”はJR東日本発行の電子マネー「スイカ」に入れた電車賃だった。

試合の遠征で電車に頻繁に乗ることからスイカを購入し、交通費として千円程度をチャージさせていた。そこからスイカの使える自動販売機で飲み物を買い、上級生に気前よく振る舞ったという。「電車賃としてあげたのに、長男にとっては自分のもので、使っちゃってもいいと思ったようだ」と斎藤さん。

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電子マネー「スイカ」「エディ」が登場したのは2001年。10年以上たった今年4月末の発行枚数は「ナナコ」「ワオン」「パスモ」「イコカ」を加えた主要6電子マネーだけで1億7千万枚を突破した。必然的に子どもが電子マネーを持つ機会も増える。

最も多いケースは交通費として持たせる交通系の電子マネーだろう。首都圏の私鉄などが発行するパスモは今年3月末の1974万枚のうち、小学生対象の小児用パスモが約50万枚を占める。

家の鍵として電子マネーを持つ例もある。マンションにITシステムを販売する日立製作所によると、スイカなどの電子マネーを鍵に使うマンションは、同社が扱ったものだけで全国約1万戸に達するという。

子どもの金銭教育サイトを運営するファイナンシャルプランナーの八木陽子さんは07年ごろから、小学校などで親向けに講演する際に必ず、電子マネーを持たせているかを尋ねてきた。「所得水準の高い地域では昔は2~3割だったが、今は8割が手を挙げる」。問題は電子マネーが「子どもが自由にほしいものを買う打ち出の小づちのようになっている」点だ。

東急電鉄の子会社、東急カード(東京・渋谷)は3年前、「お客さんから子どもに持たせられないかという要望があったので」(同社)、パスモ初のオートチャージ付き小児用パスモを発売した。お金が少なくなると、自動的に親のクレジットカードから引き落とされる。宣伝文句は「小学校から高校まで、12年間チャージなし」だった。

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