これは何なのか わからなさに心を揺さぶられる
森村 平野さんは『アイ・ウェイウェイ展』(※2)についてはあんまりいい評価をしていませんよね。僕もね、ノーコメント(笑)。
平野 全然いいと思いませんでした。取り上げなくてもいいかとも思ったのですが、彼の政治的パフォーマンスだけでワイワイ騒いでいる人たちに、一度、作品をちゃんと見てみたらという気持ちがありました。だから、いきなり酷評して見に行く気を失わせるような書き方もしてません。もう「いかにも現代アート」という感じで、お茶とか自転車とか題材にして、外国人にとって中国人アーティストがこう見えたらいいだろうなというような、そんなことばっかり考えて作品を作ってますよ、彼は。
森村 彼は政治的な問題で当局に逮捕されたりもしているけれど、それをテーマに作品を作っていますね。実作を見ましたが、どうも琴線に触れて来ない。だから、平野さんのやる気のなさがレビューに出ていて、あ、意見は同じだな、ってうれしかった。
平野 そうですね。僕は、現代アートがわからない、と言うときに、2つの意味があると思うんです。これは何なのかと認識を揺さぶられて自分の心にひっかかるわからなさと、アイ・ウェイウェイの『1トンのお茶』みたいに、「だから何なの?」っていう、こっちがしらけるようなわからなさ。感覚的な分類ですけど、僕はその違いはやっぱりあると思う。一般には、それがごちゃまぜになって「わからない」と言われているんだと思いますけど。
「わからなさのおもしろさ」をどう伝えるか
コンセプチュアルアートというのがあるぐらいだから、必ずしも言葉ナシで作品が自立してないといけないとも思わないんですけど、作品の横に大仰なコンセプトが書いてあって、作品を見てがっかりすることは結構ありました。だから、現代アートに特に興味のない人にも風通しをよくしたいと思いつつ、無理して現代アートの弁護人になるつもりもなくて、回によってかなり温度差が出てると思います。森村さんの映画評でも、「わからない」映画が多かったですよね。
※2 『アイ・ウェイウェイ展―何に因って?』 アイ・ウェイウェイは現代中国を代表する美術家。2009年7月25日~11月8日に森美術館(東京都港区)で開催した。1トン分の茶葉を圧縮した立体「1トンのお茶」、自転車42台を円筒状につなげた「フォーエバー自転車」など、1990年代以降の主要作品26点を紹介した。