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これを言ったら、おしまい 相続準備に子供の禁句

2013/12/9

 相続税の増税まで1年あまり。高齢の親に対して、早めに相続準備をしてほしいと考える人が増えている。家族が集まる年末年始は話を切り出す機会だ。ただ、子から話をもちかけるのは難しく、かえって親の心が固く閉じてしまう恐れもある。言ってはいけない言葉とは――。
相続税について関心が高まっている(東京・大手町、税理士法人レガシィの相続増税セミナー、9月)

 「遺言、もう書いてくれたの?」――長女(52)からこう言われると、都内の女性Aさん(80)はいつも言葉に詰まる。

 別居している長女が遺言を求める理由は、相続税対策だ。Aさんには自宅のほかに大した資産はない。だが2015年に相続税が増税されると「課税される恐れがある」と長女。相続セミナーに参加し、課税される場合は相続手続きを早く終わらせる必要があると学んできた。

 長女は「今は妹と仲がいいけれど将来は分からない。遺産の分け方を事前に決めてくれれば、姉妹の相続争いは起こらない。だから遺言を書いてほしい」。さらにAさんに、平等に分けるためには家を売るのが一番いい、と助言した。預金は家の価値より少なく、平等に分けられない。争いを避けるにも納税にも、家をお金に換えるのが最良、というわけだ。

 理屈では分かる。でも、この家は先立った夫と若い頃に買い、娘たちを産み育てた。柱にも壁にも、夫と力を合わせて歩んだ人生の一歩一歩の思い出が染み込む。

 死後に売られるのは仕方ない。でも、自分はまだ生きている。今から手放すことを考えるのは――言葉も手も、そこで止まる。「遺言、書かなきゃね。そのうちにね」。Aさんは長女に、それしか言えない。

 相続に詳しい税理士の天野隆さんによると「50代の子世代は“相続適齢期”」で、増税を控え相談に訪れる人も増えているという。ただ、親子で温度差があり、子が乗り気になっても親が手を付けないケースが少なくない。相続準備で親の心を閉ざしてしまう子の禁句があるとみる。

「遺言書いてください」

 「早く死ねというのか」。父親(90)の言葉に、神奈川県の男性(57)は慌てた。判断力が衰えてきた父親が心配で「そろそろ相続を考え、元気なうちに遺言を書いてくれないか」と切り出したところ、思いがけない反応だった。相続税がかかるのは確実で、相続準備は財産を管理する父しかできない。つとめて実務的に相談したつもりだったが、感情的な反発を呼んでしまった。

 天野さんは「遺言や相続対策の準備をストレートに親に頼むと、話が進みにくくなる」と強調する。特に親が80歳以上の高齢の場合だと「死ぬ準備をせかされたと思われる恐れが強くなる」。元気な60代ならまだ将来の実務的な話として聞くことができるが、高齢になるほど死が現実味を帯びてしまい、残酷に感じられがちだ。

「面倒見るから相続したい」

 「世話している私に家をくれると言ったのに」と、都内に住む女性(62)は落胆する。同居する90代の母親が「女性に財産を狙われているの」と話したと、別居の姉から聞かされた。「あなたは同居だから家賃もかからず得しているでしょ? 家を欲しがるのはおかしいわ」と姉に言われ、納得できない。

 相続コーディネーターの曽根恵子さんは「最近、老親との同居や介護と、財産を継ぐこととを、交換条件のように考える人が多い」と指摘する。子の1人が介護を引き受けるかわりに相続を期待すると、兄弟仲が悪くなりやすく、相続争いに発展する恐れがある。

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