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旅行・レジャー
日本の歩き方

2014/2/15

日本の歩き方

街道がお伊勢参りに使われたことをしのばせる木札(奈良県生駒市)

「対向車とすれ違える場所は運転手は互いに分かっていて、その前に警笛を鳴らしたり、そこまで移動したりする」と下西さんも説明してくれた。車がすれ違える幅を確保するため道は駐車禁止で、雨量が多い時は通行も規制される。初心者が車で峠を通行するには難儀しそうだ。

住宅街を過ぎると、うっそうとした木々の中に松尾芭蕉の句碑を見つけた。「菊の香にくらがり登る節句かな」。1694年(元禄7年)、病をおして伊賀を発(た)ち、旧暦9月9日(重陽の節句)に奈良から大坂に向かって暗峠を越えたと説明書きにある。道は車で通るにはきついが、路傍に点在するこうした碑などを楽しむこともできる。

伊勢参りの名残

ハイキング向けの生駒縦走歩道と交差する辺りで車を降り、下西さんと歩いて峠を目指す。下西さんが鎌を持った農家の男性(81)に声をかけた。男性は「昔は大阪からお伊勢参りに行く人たちの通り道だった」と解説してくれた。確かに街道のあちこちに「おいせまいり」と書かれた木札がぶら下げられている。

大阪府と奈良県の境に立つ下西巌さん。少年時代にこの道を自転車でよく通った

下西さんの生家は鍛冶屋で、少年時代に農家に修理した鋤(すき)、鍬(くわ)、鎌などを届けるため自転車でこの道を通った。「当時は舗装されておらず、大変だった」と下西さん。街道が舗装されたのは府八尾土木事務所によると1988年から89年ごろだ。男性は下西さんの古い知り合いで「でこぼこの道を通った」頃の思い出話に花を咲かせた。

いくつかの寺院や石碑を通り過ぎ、坂がなだらかになると、まもなく峠だ。舗装道路が石畳の道に変わり、少し行くと「大阪府東大阪市」と「奈良県生駒市」の地名を示す標識があった。近くには「暗峠」の石碑も見える。

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