2013/7/20

日本の歩き方

ものづくりの町はカレー好き?

カレーラーメンの老舗店「正広」(三条市)

さて、そもそもなぜ、新潟県民はカレー味好きなのか。まずは県庁に聞いてみた。農林水産部食品・流通課の販売戦略班によると、(1)カレーと相性のいい米がおいしい。例えばカレーに合うように開発した品種の「華麗舞」は妙高市が発祥の地(2)野菜、海産物が豊富で野菜カレー、シーフードカレーが格段においしい(3)新潟港は幕末の開港5港の一つで、他国の食文化を受け入れやすい風土がある(4)金属製スプーンやカレーポットの日本一の生産地である燕市があり、カレー文化が定着しやすい素地がある――などの理由が考えられるという。「なるほど」とは思うが、これだけではなさそうだ。

この手の話を聞くうってつけの人が新潟大学にいた。「B級グルメが地方を救う」(集英社)の著者、田村秀・新潟大法学部長。自治省の役人から教授に転身した地方自治の専門家で各地の食文化にも詳しい。北海道出身の田村教授は「室蘭や苫小牧などカレーラーメンが根付いている土地は製紙工場や製鉄工場があり、三条と同様に製造業の町。スタミナ料理が好まれる土地柄です。寒い地域は、暖まる食べ物、辛いもの好きという共通性もありますね」と分析する。

三条の「正広」の阿部圭作社長(46)も「鍛冶屋の町である三条は昔から『出前文化』があります。仕事の手を休めず短時間で栄養が付くように、高カロリーで場所を選ばずに食べられる職人用の食事としてカレーラーメンが生き残ったようです」と話す。さらに「高度経済成長を支えた70代、80代の年配の方々は『忙しかった昔を思い出すよ』と言ってこのカレーラーメンを食べますね」と言う。

「B級グルメはあくまで脇役。ただ、米や魚という4番バッターだけでなく、カレー味のB級グルメが豊富なことは、新潟の食文化の多様性を全国の消費者に発信する上ではプラスが大きい」と田村教授は指摘する。多彩な食が息づくものづくりの町新潟で、地元の産業と深く結びついたカレー味の商品が進化し続けていることは、製造業を軸に成長してきた日本の食文化の象徴かもしれない。

(新潟支局長 大久保潤)

注目記事