いまや産地に製造業者は50社を超えるとされるが、ほとんどが製造と乾麺の直販だけ。食べられる店は多くない。

田園風景の広がる小さな町にある老舗の佐藤養助商店の総本店(秋田県湯沢市)

それでも産地の近くでうどんを味わいたいなら、稲庭地区からほど近い湯沢駅前の商店街で秋に開かれる「全国まるごとうどんエキスポ」が好機。讃岐うどんや名古屋のきしめん、長崎の五島うどんなど全国各地からご当地うどんの団体が参加、昨年は2日間で7万人を集めた。今年も10月上旬の開催に向けて準備が始まっている。

最大手の佐藤養助商店は、秋田県内のほか、東京と福岡に直営店を構えており、最も食べに行きやすい店だろう。比内地鶏やきりたんぽなど秋田県の郷土料理も食べることができる。最近では、タイ風グリーンカレーやゴマ味噌ベースの担々麺風のつけうどんなどをメニューに加えた。グリーンカレーのつけうどん(ランチ1100円)は、比内地鶏やしょっつるなど秋田特産品も使う商品。若い女性客にも好評だ。

保存食として生まれた稲庭うどんの基本は乾麺だが、メーカーの一つ、寛文五年堂は生麺の製造を始めている。賞味期間が短いため、ベテラン職人2人を担当に割り当てた受注生産だ。この生麺を食べられるのが、秋田市内の直営店。観光客らに人気があるのが「生麺・乾麺味比べ」(1000円)。冷たい麺と温かい麺を選ぶことができる。生麺は乾麺よりも、もちもちした食感と強いコシが特徴だ。

佐藤養助商店のグリーンカレーのつけうどんは女性客に人気だ
生麺(左)は、やや太くもちもちした食感が特徴(寛文五年堂)

本家は「幻のうどん」

本家である稲庭吉左衛門家のうどんは木箱入りで4200円の高額

全国に知られるようになった稲庭うどんだが、今でも「幻のうどん」とされるものがある。本家の稲庭吉左衛門家の製品だ。各社が量産する中で、16代目となった今も昔ながらの家業としての生産を守り続けているためだ。親戚や古くから付き合いのある料亭など入手するルートが限られており、秋田県人でも食べたことのある人は少ない。

そんな幻の麺だが、秋田空港ターミナルビル直営の土産物店なら入手できる可能性がある。4束800グラムで木箱に入り4200円の高額品だが、贈答品に向いている。秋田市内で食べるとしたら、料理店・光琳で入荷したときだけの限定メニューとして提供されている。他の稲庭うどんよりも少し幅広な「宗家の稲庭うどん」(1280円)は、強いコシに伝統の技術を感じることができる。

冷たくしたほうが特徴がわかる稲庭うどんに向いているのは夏。店に出向くのも良し、乾麺を購入して自宅で食べるのも良し。喉ごしとコシを味わいながら、伝統の技法に思いをはせてみてはいかがだろうか。(秋田支局 曽我真粧巳)

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