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本場・秋田に「幻の稲庭うどん」 幅広で強いコシ 東北麺紀行(2)

2013/6/1

「日本3大うどん」というと何を思い浮かべるだろうか。讃岐(香川)、きしめん(名古屋)、五島(長崎)、水沢(群馬)、氷見(富山)などいくつかの名が挙がるが、秋田県南部の湯沢市稲庭町で生まれた「稲庭うどん」は当選確実だろう。

■見た目より強い弾力

巻くように美しく盛りつけられた稲庭うどん(佐藤養助商店の二味せいろ)

田園風景の広がる小さな町に創業150年を超える老舗、佐藤養助商店を訪ねた。

稲庭うどんの魅力がわかりやすいと勧められたのが、しょうゆとごまの2種類のたれにつける「二味せいろ」(850円)。

冷や麦より少し太く黄色みがかった麺が巻くように美しく盛りつけられている。持ち上げると箸が透けて見える麺をすすると、かすかな小麦粉の香りが鼻に抜ける。見た目は薄いが歯を一瞬押し戻すかのような弾力があり、喉越しは絹のように滑らかだ。

稲庭うどんの最大の特徴は練る、綯(な)う、つぶす、伸ばすといった工程をすべて手作業で行っていることだ。同商店総本店で工場を見学できる。

材料は厳選した小麦粉、栗駒山地の清浄な水と塩だけ。うどん用に配合した特製の小麦粉を空気を含ませながら力強く練る。小巻きにした生地を両手でよりながら2本の棒にあやがけしていく手綯い。熟成させた麺を120センチまで手でさすりながら伸ばす。

最後の乾燥は、中に水分が残らないように時間をかけ、気温や湿度などを見定めながら温度調節し時間を見極める。熟練の職人の経験がものをいう作業だ。生地づくりから出荷まで4日間だ。

稲庭うどんの麺は、職人が手でさすりながら一気に120センチまで伸ばしていく(秋田県湯沢市の佐藤養助商店総本店で)

乾燥後の裁断でしか包丁を使わない製法は、うどんよりも手延べそうめんに近い。そのルーツは奈良の三輪素麺(そうめん)や宮城の白石うーめんなどの説があるが、文献が残っておらず定かではない。

稲庭うどんの歴史は350年を超えるが、全国に名が浸透したのは意外と新しい。製法が確立したのは1665年と言われる。秋田の佐竹藩主への献上品として、稲庭吉左衛門家に伝わる「一子相伝、門外不出」の技だった。製法の途絶を避けるため、稲庭家から技を受け継いで1860年に創業したのが佐藤養助商店だ。2つの家は子から孫へと受け継ぎ製法を守ってきた。家業として少量生産だったため、広く一般に知られることはなかった。

■タイ風カレーとの出合いも

転機となったのは佐藤養助商店の7代目が、家族以外の職人を雇い技術を公開した1972年。雪深い稲庭地区で、冬になれば男たちが出稼ぎに出て除雪作業もままならない状況を憂い、地場産業を育てようとしたのだという。量産へカジを切ったあと、80年代以降のグルメブームの波に乗り、稲庭うどんの名前は全国に広まった。

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