酒と鮭

地域文化に積極的に取り組む酒蔵は他にも多数ある。朝日酒造(長岡市)は、同社の創立者が建てた古い木造建築「松籟閣(しょうらいかく)」で茶会や寄席を開いているほか、本社のエントランスホールでコンサートを開催。吉乃川には予約制で見学できる「酒蔵資料館 瓢亭(ひさごてい)」があるうえ、同社が位置する摂田屋地区は鏝(こて)絵の蔵など複数の有形文化財があり、周辺観光もできる。

新潟大学の日本酒サークル「雪見酒」は「サケ×アテグランプリ2013」でグランプリを受賞した

小さな蔵にも見どころはある。美の川酒造(長岡市)の自慢は見学者に出している「さんじょ漬け」という漬物。東北にある青トウガラシを使った漬物をアレンジし、長岡野菜の1種であるかぐらなんばんを漬けたのが特徴だ。酒蔵見学は予約が必要なことが多いが、地域の文化そのものを楽しむ一つの手段だ。

次は他県では見ない珍しい肴(さかな)を紹介しよう。村上市で作られる「鮭(サケ)の酒びたし」はその代表的なものだろう。寒風にさらした塩引き鮭を酒に浸して食べるもので、昨年11月に農林水産省の主催で開かれた「サケ×アテグランプリ2013」では、この鮭の酒びたしを紹介した新潟大学の日本酒サークル「雪見酒」が見事にグランプリを得た。

一緒に選んだ酒は青木酒造(南魚沼市)の「鶴齢」。「鮭の酒びたしを製造している業者からは村上の酒ではないのかと言われた」と、このサークルの渡辺信之代表は苦笑する。村上の日本酒は酒びたしの味を引き立てるものが多いが「酒と肴のコンテストなので、酒の方も米の味がしっかり出ている鶴齢を選んだ」。

月に1~2回は試飲会を行い、その感想をネット上のページに載せている同サークルだが、グランプリを取った後はアクセスが増えた。試飲した日本酒の数が増えてくれば、ページをもっと検索しやすくして読む人の参考になるようにしたいと考えている。

サイホンの原理で

JR長岡駅にある土産物店わがんせでは、アルミ製「十分盃」を販売している

いくらおいしいお酒でも「ほどほど」に――。これこそが、正しい酒飲みの心得かもしれない。

長岡市に伝わる「十分盃」(じゅうぶんはい)。8分目までついだ時には何も影響がないが、盃いっぱいに酒を注ぐとサイホンの原理で底に空いた穴から酒が全て流れ出る仕組みだ。長岡藩の殿様がこの盃を使ってぜいたくを戒めたのが地元で知られるようになったきっかけで「今でもその時の十分盃が資料館に展示している」(地元の歴史に詳しい内山弘氏)。

十分盃を土産物として取り扱っているのが、JR長岡駅の駅ビルにある土産物店「わがんせ」。地域のアルミ加工業者に依頼し、アルミ製の十分盃「ほどほど」を開発した。サイホンの仕組みの部分を取り外して洗いやすくしているのが特徴で、全国推奨観光土産品審査会で日本商店連盟会長賞を受賞した。

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