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芽吹く産業観光 工場など「大人の社会科見学」

2010/6/28 日本経済新聞 電子版

首都圏で大型公共施設や工場など産業関連施設を巡る観光ツアーが人気を集めている。知的好奇心を満足させる楽しさや、巨大な構造物を間近に見られる迫力に魅力を感じる人が増えているためだ。これまでは企業や自治体の施設紹介の側面が強かったが、発売直後に定員に達するツアーも出るなど、料金を支払って楽しむ観光ビジネスとして芽が出始めている。

東京港臨海大橋(仮称)が眼前に迫る(シーライン東京のツアーの様子)

東京港を航行するクルーズ船が、巨大恐竜を連想させる建設中の橋に近づく――。

はとバス(東京・大田)子会社のシーライン東京(同・港)は21日、海上から大型建造物を見学するツアーを実施した。参加客は約80人で、料金は大人4000円。東京都福生市に住む男性会社員(53)は東京港臨海大橋(仮称)の建設現場を眺めて「真下から橋を見上げると迫力がある」と満足した様子。遠方には建設中の東京スカイツリー(同・墨田)も見えた。

同社の若王子秀夫取締役は「インフラや大型の建物が観光資源として注目されている。“大人の社会科見学”を掘り起こしたい」と狙いを語る。7月と9月以降にも同様のツアーを開催予定だ。

工場や建造物などを見学する産業観光は地域経済を刺激する効果が期待できる。自治体や企業でつくる任意団体、全国産業観光推進協議会(東京・中央)は「工場が見学者を受け入れる体制を整備したり、地域の観光地と連携したツアーが登場するなど、ここ数年で産業観光市場の芽が出てきた」と指摘する。

JTB首都圏は自治体と連携し、各地の産業関連施設を訪ねるツアー商品の販売を始めている。川崎市では今年度から「川崎工場夜景バスツアー」を本格的に実施している。通常は立ち入れない倉庫の屋上から、照明で輝く化学プラントや製鉄所などの夜景を眺められるのが売り物だ。

募集人員は毎回45人。先着順に予約を受け付けるが「電話がつながらないと市に苦情が来る」(経済労働局産業振興部)人気ぶり。毎月第1、第3金曜日の開催だが、夏休み期間の7~8月は毎週金曜日に実施する。料金は大人3200円、小学生2500円。

臨海部の大規模工場は人気が高い。JFEスチール東日本製鉄所を海から見学できる、千葉市の観光船ツアーも定員の100人に対して「2~4倍の応募がある」(経済農政局)。広大な敷地に巨大設備が並ぶ風景は「非日常の世界」と評判で、県外からも応募もあり年齢層も20歳代から80歳代と幅広い。

JTB首都圏は埼玉県内でも産業観光ツアーの参加者を募集し始めた。秩父市内の4つのダムを回る商品や、利根川の水を取水する利根大堰の見学ツアー、有名人の顔を模したゴムマスクを製造するオガワゴム(さいたま市)や消しゴムメーカーのイワコー(八潮市)を巡るツアーもある。

これまではいわゆる観光名所などを巡る商品を扱ってきたが、産業観光人気に着目し新商品を企画した。埼玉県内は温泉やテーマパークなどの大型観光地が少なく「産業関連施設を観光資源にしたい」(産業労働部)と県の期待も大きい。

女性限定のツアーもある。神奈川県観光協会が24日に開催したのは美と食を体験できるツアー。資生堂鎌倉工場(鎌倉市)でメーキャップ講座を受け、味の素川崎工場(川崎市)、しょうゆ製造の横浜醤油(横浜市)などを訪れた。料金は6000円(昼食込み)で定員15人。「化粧品工場などを巡る女性限定ツアーの要望が多かった。今回も受け付け開始後すぐに定員に達した」(同協会)。

年代や性別を問わず人気のすそ野が広がっており、産業観光市場は今後さらに拡大しそうだ。

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