「きりたんぽ」真の主役 歯応えダンゼン比内地鶏東北肉紀行

秋田の冬の代表的な味覚の「きりたんぽ」には比内地鶏は欠かせない(秋田市の「濱乃家」)

新米が出回り始める10月。秋田県北部が発祥の郷土料理「きりたんぽ鍋」の季節の到来となる。ごはんをこねて棒に巻き付け、焼いたものがきりたんぽ。だが、この鍋の真の主役は丹精込めて育てられた比内地鶏だ。

本場である大館市のきりたんぽ専門店「元祖むらさき」を訪ねた。姉と弟で切り盛りする店で、出張ついでに立ち寄ってもカウンター席で「1人鍋」が楽しめる。特上きりたんぽ鍋(1人前、2200円)をいただいた。

姉の見上聖貴子さんがつくって盛り付けてくれる。鍋の具材は定番のきりたんぽ、ゴボウ、セリ、マイタケ、そして比内地鶏。比内地鶏の身は鍋で煮ても弾力が残り肉の味が落ちない。見上さんは「比内地鶏は身が締まっていて、しつこさを感じない脂分が特徴です」と説明してくれた。

元気に歩き回る鶏たち

比内地鶏のうまさを探ろうと養鶏場を訪ねた。大館市の山間部にある比内地区。柵で囲われた農場のハウスの外では多くの比内地鶏たちが草をついばみ、土を掘ってミミズを食べるなど自由に歩き回っている。

「しっかりと運動してもらうことで身が締まり余分な脂分が落ちる」と話すのは養鶏場の阿部重信さん。比内地鶏の生産に携わって20年以上で「鶏の表情をみれば、体調がわかる」というほどだ。

臆病な鶏が大きな音に驚いてハウスの隅に一気に集まり圧死するのを予防するため、ラジオや音楽を流して音に慣れさせるなど細かい配慮もしている。

比内地鶏のうち、より味が良いとされるメスの飼育期間は150日以上と決められている。「最も味が良くなるには170日程度は必要」と阿部さん。地鶏の代表格である名古屋コーチンの130日より長く、一般的な鶏肉用のブロイラーと比べれば3倍の期間だ。

1羽当たりの餌の量も3倍以上かかり、その分価格も高価。丸鶏は1キロ当たり3000円超で取引され、ブロイラーの5倍以上になる。

名古屋コーチンと並ぶブランドとなっている比内地鶏の元となっている比内鶏は江戸時代に比内地方で飼われていた地鶏で、枝から枝へと飛ぶなど活発に運動し、身が締まり肉の味も優れていた。純粋な日本地鶏で学術的な価値があるとして、1942年に国の天然記念物に指定された。