ササニシキ・つや姫・あきたこまち 東北のコメ三国志

大崎市内には194号だけを扱う人気店もある。和食会席料理の「中鉢」。中鉢喜信社長はササにこだわり、今回の品種改良にも料理人の立場から注文を付けてきた。

「プロの生産者が作るコメだから、こっちもプロの料理人として使う」

使う側が見放さなかったササ。新品種もできた。ひとめぼれ一辺倒の宮城の農業に新たな地平を開くか。生産者がこたえる番だ。

つや姫、かむほど増す甘み

ちょっと堅めのご飯が炊けた(東京都渋谷区の「おこん」)

全国からごはん党が集まる東京・渋谷の土鍋ごはん店「おこん」。扱う50種類近い銘柄米の中で最近、人気急上昇中なのが山形県産のつや姫だ。

土鍋のふたをはずす。ふわっと湯気が上り、炊きたてごはんの何とも言えない優しい香りが鼻をくすぐった。

「シャリのつや感はピカ一。うまみや甘みがあり冷めてもおいしい」(店主の小柳津大介さん)

出されたごはんをほお張る。粒が立っていて、かむほど甘みが増してきた。削りたてのかつお節を載せ、しょうゆを数滴垂らす。ごはんの甘みとしょうゆの塩気、かつお節の香ばしさが絶妙だ。これだけあればおかずはいらない。

つや姫は山形県が10年をかけた新しいブランド米だ。合言葉は「魚沼産コシヒカリに追いつけ追い越せ」。 県水田農業試験場はコシヒカリの系譜を継ぐ「山形70号」と「東北164号」を交配。10万粒の中から暑さや病虫害への強さ、収穫量などに優れたものを選別し、1つの品種に絞り込んだ。

塩昆布を載せたお焦げのご飯にほうじ茶をそそいだ茶漬け(東京都渋谷区の「おこん」)

交配したコメが、コシヒカリを上回る食味や白さ、粘りを持っていたことに関係者は喜んだ。ただ成長が比較的遅く、冬の訪れが早い山形では冷害や風水害などに遭うリスクが大きい懸念があった。それでも、開発担当者の「絶対に山形の顔になる」という熱意が実り、県の奨励品種に認定されるまでになる。

「絶対和食に合う」

まずこだわったのが、育て方だ。農薬や化学肥料の使用量を通常の半分以下に抑える特別栽培もしくは有機栽培に限定。整粒割合80%以上、食味値80以上、たんぱく質含有率6.4%以下に設定した基準は、一等米の規定を上回る。栽培適地も絞り、熟練の農家だけに栽培を委託した。

吉村美栄子知事によるトップセールスも普及に向けた力となった。2009年2月、同知事は就任後の最初の仕事としてつや姫の名前を決定。複数の候補の中から見た目や大切に育てた印象を与えるものを選んだという。以来「つや姫の母」を自任し、率先して県内の店頭に立ちPRを続けている。

ただ生産量の拡大に伴い、産地による品質のばらつきも指摘されるようになった。コメの消費そのものの減退で市場がダブつき気味なのも、頭の痛い問題だ。

五ツ星お米マイスターの資格を持つ米穀店・スズノブ(東京・目黒)の西島豊造社長は「つや姫は絶対に和食に合う。それをもっとアピールすべきだ」と指摘する。