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せき止め湖・壁の亀裂…神奈川、関東大震災のつめ跡

2013/8/31

10万5000人を超える死者を出した関東大震災から9月で90年。被害は首都東京を壊滅させた大火災が象徴的だが、相模湾沖の震源地に近い神奈川県内でも土砂崩れなど深刻な被害が出たことは、今では知る人も少なくなっている。往事の災禍を振り返ることで、現在の防災対策への教訓が得られるのではないか――。現存する神奈川の「震災遺跡」を訪ねてみる。

山あいの森にひっそりと水をたたえる震生湖(神奈川県秦野市)

山が裂け湖に

1923年9月1日午前11時58分に相模湾沖を震源として発生した地震はマグニチュード(M)7.9。阪神大震災を大きく上回るエネルギーは神奈川県内の各地に山崩れによる被害をもたらした。今でも象徴的な地形を残しているのが秦野市南部の「震生湖」。その名の通り、震災で周辺の山林やタバコ畑が250メートル以上にわたって崩れ、せき止められた小川の水や湧水が数年かけて湿地にたまり、周囲1キロに及ぶ湖となった。

湖畔には東京帝国大学地震研究所で現地調査に当たった文学者でもある寺田寅彦の句碑がある。「山さけて成しける池や水すまし」。震生湖近くでタバコの葉やそばの実を栽培していた小泉政雄さん(93)は「山が裂ける」震災を体験し存命する数少ないひとり。「地震だ」との声で、おもわず親のひざの間に入り込んだことを覚えている。小泉さんによると、震災後しばらくは杉の立木が湖面から伸びており、「水泳の時に杉の木につかまって一休みしていた」。今は杉の木も朽ち、緑に囲まれた静かな湖面は釣りや散策をする人の憩いの場となっている。

神奈川で多かった関東大震災の住宅倒壊被害
全潰半壊焼失流失埋没合計
非焼失 非焼失
神奈川県6357746621540354304735412497125577
東京都244691184229525172311765052205580
千葉県1376713444609360304317119976
埼玉県4759475940864086008845
山梨県57757722252225002802
静岡県238323096370621457319259

(2004年、諸井孝文、武村雅之両氏調べ)

この山崩れは幼い犠牲者を出した。2学期の始業式を終えた地元の尋常小学校の少女2人が地震後帰宅せず行方不明に。目撃者の証言などから、この山崩れに巻き込まれたとみられている。後日の村人たちの懸命の捜索のかいもなく、少女の悲劇を悼む供養塔が、湖の上に崩れ残った丘の上にひっそりと立っている。

小田原市のJR根府川駅周辺で発生した大規模な山崩れは、関東大震災の中でもひときわ深刻な土砂災害の1つだ。押し寄せた十数万立方メートルの土砂が、駅舎やホーム、入線してきた下り列車ごと相模湾へと流し去った。「日本国有鉄道百年史」によると、乗客ら死者112人、重軽傷者13人の犠牲を出した。

現在でも、被災時のホームやレールが流された土砂とともに駅直下の海底に沈んでおり、ダイバーの潜水ポイントにもなっている。無人駅舎の改札口わきに犠牲者を慰霊する碑が立っている。箱根の山が海辺に切り立つ周辺では別の土砂崩れも発生、多数の住民が犠牲となっている。

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