隠し味は豚骨 喜多方、朝っぱらからラーメン三昧東北麺紀行(3)

目当ての店が軒並み売り切れ――。休日の喜多方(福島県)でこんな目に遭わないようにするには「午後1時までがぎりぎり」(協同組合蔵のまち喜多方老麺《ラーメン》会の渡部尚之専務理事)だ。年間170万人近くがラーメン目当てに全国から集まり、人気店の前で行列をつくる。

平らで太くて縮れた麺が喜多方ラーメンの特徴(源来軒で)

市内のラーメン店は約120軒。しょうゆや米を蓄えていた蔵と、昭和30年前後に作られた家が混在する街並みで、多くは「食堂」と名乗っている。土間に簡素ないすとテーブルを並べた店が多く、店内には長年つくり続けてきた味が染みついているようだ。

元祖の味は…

共通しているのは平たくて波打った「平打ち縮れ太麺」だ。元祖は大正15年創業の源来軒といわれている。冬の喜多方は積雪が多く、自動車が普及してなかった時代には出前に時間がかかった。麺がのびてしまうのを避けるため、ゆでる前に腰を入れてもみ直し、気泡を減らして密度を高めたのが始まりだ。店主の小さな工夫が街全体に広がり、後に全国で知名度を高める最大の売り物になった。

休日には人気店の前に長い行列ができる

その源来軒の「ラーメン」(600円)。麺は幅4ミリ前後で平たく、ゆるやかに縮れている。ワンタンを連想させる柔らかさと弾力が両立したような食感だ。スープは、中華ラーメンのかんすいの香りに鶏ガラや煮干しのうまみが加わり、懐かしさと奥深さが後を引く。日ごろの食事で塩分を気にしているが、すべてを飲み干した。

店主の星欽二さんに秘訣を聞くと、煮干しは2種、鶏に豚骨、北海道の昆布に野菜と13種類の食材からだしを取っているという。厨房の一角では20代とみられる男性が一心に小麦粉をこねていた。開業を目指す人が全国から修行に来ていて、その累計は「106人になる」(星さん)。喜多方でも「くるくる軒」など、この店で研さんした人たちの店がいくつかある。

各店が特注の麺

人口5万人の喜多方がなぜ札幌、博多と並び称される「ラーメンの街」になったのだろうか。

独特な形状の麺は、スープとうまくからむといわれている。手打ちでしか作れなかったのを、地元の製麺会社が機械化に成功。「狭い街中が同じタイプの幅広麺を使う類を見ない街になった」と全国のラーメン店を研究している富多屋生麺(福島県郡山市)の渡辺一明社長は解説する。

この形状をさらに生かそうと、水分の含有率を高めてつるつるとした食感を増し、生地を寝かせてたんぱく質などの醸成を進める「多加水熟成」という製法を取り入れている。 市内に12ある製麺会社は、細かな要求に応じた特注品を作っている。朝日屋食品(同市)の蓮沼超男社長は「太さ、薄さはもちろん、ラーメンの味わいを出すかんすいの含有量など各店舗の要求は繊細で多様」と話す。それぞれが味を追求して、最善の組み合わせを模索した結果だ。