50歳からの週末お遍路 数珠・白衣・読経は?

「お四国病」。四国88カ所霊場を巡るお遍路に魅せられ、何度も繰り返す人たちは、自らをこう呼ぶ。自嘲と、そして少しだけ誇りも込めて。昨年から週末を利用して遍路を始めた50過ぎの筆者も「お四国病」の人たちなどから聞いた言葉を励みに、四国霊場開創1200年記念の今年、新たな気持ちで「週末遍路」に挑んでみた。

1日コース「7ケ所まいり」は全長約20キロ

7ケ所まいりは弥谷寺から始まる。五百数十段の階段上りが待っている

「お遍路の魅力?こればっかりは『知りたかったら、回ってください』としか言えないな。私はもう『お四国病』だから。今年も月1回はすると思う」(車で263周回った徳島県の82歳の男性)。

地球9周以上を走り、延べ2万3144カ寺を詣で、般若心経を4万6288回唱えても、まだ足りていない。ますますのめり込んでいく。

「四国の自然はいいし、達成感もある。切りがないから3回を区切りにしようとか、今回を最後にとか思ってきたけど、もう9回目です」(岡山県の70代の男性)

遍路の何が人を引き付けるのか。ある人たちにとっては麻薬のような、その魅力を知りたいと思ってきた。筆者が今回選んだのは、香川県三豊市の弥谷寺(いやだにじ、71番)から同県多度津町の道隆寺(どうりゅうじ、77番)までの7カ寺。「7ケ所まいり」とも呼ばれ、全長約20キロメートル。歩いても1日で回れる。江戸時代、脚が弱い人などにとって88カ所巡りと同じ御利益がある、とされた。

「お遍路は妻とこれまで5回しています。でも妻の体は弱り、認知症も進んでいる。もう遍路する力は残っていない。だから7ケ所まいりを選びました。夫婦でする最後の遍路です」(香川県の72歳の男性)

筆者が「7ケ所まいり」を選んだ理由の1つに、ある寺でこの老夫婦に出会ったことがある。妻の手を取って、ゆっくり歩く夫。彼も足首を複雑骨折し、右足を引きずっている。寺のベンチに座る2人。過ぎていく時間を惜しむように境内を眺め続ける。

国の史跡指定を目指す弥谷寺からの遍路道

四国のお年寄りなどは遍路を「お四国さん」と呼ぶことがある。筆者はこの老人から、初めて「お四国さん」という言い方を聞いた。弘法大師への思慕、お遍路さんへのあたたかいまなざし、霊場を持つ誇り、それらを包み込み、それでいて優しい響きを持つこの言葉が好きになった。

7ケ所まいりは、弥谷寺への五百数十段の階段上りから始まる。3月末。勢い込んで出掛けたものの、この日はあいにく朝から雨……。正直、気が重くなった。

「遍路をして人生が変わったかって? 確実に変わったのは雨が苦にならなくなったことかな。雨の休日なんて家でゴロゴロしていたのに、遍路ではかっぱ着て歩いている。晴れでも雨でも『お四国さん』にはそれぞれの楽しみがある」(遍路で19周した東京都の60代の男性)

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