東京から大阪に転勤して1年。街を歩いて実感したのはアーケードの多さだ。「日本一長い商店街」として知られる天神橋筋商店街(大阪市)しかり、屈指のにぎわいを見せる心斎橋筋商店街(同)しかり。主要駅前の商店街にはたいていアーケードがあり、街の顔になっている。だが、国道にまでアーケードがかかっていると知った時は、にわかに信じられなかった。
■これが本当に国道なのか
国道170号。地元では「外環(そとかん)」と呼ばれる。大阪府北部の高槻市から大阪平野の東端を経由し、府南部の泉佐野市に至る幹線道路で、その大部分に旧道の170号が並行して走っている。その旧道の一部が「アーケード国道」になっているという。
実態を確かめるため、まずは起点に向かった。阪急高槻市駅から歩いて3分。八丁畷交差点から国道170号は始まる。8トントラックやダンプカーが切れ目なく行き交う、郊外ならどこにでもある交差点だ。進路を南へ取り、淀川を渡る。4車線の広い道がひたすら続き、両脇にはロードサイド型の量販店が並ぶ。
寝屋川市の秦北口交差点で新道を離れ、100メートルほど東にある旧170号に入ると景色は一変する。路側帯も中央分離帯もない。両脇に民家の軒先が迫り、小型トラックと軽自動車がこわごわすれ違う。本当に国道なのか。不安に思いながら進むと、電柱の陰から「おにぎり」と呼ばれる国道標識が恥ずかしげに顔をのぞかせていた。
市内をさらに南へ下り、高宮地区に入る。中心に位置する高宮神社は10世紀に朝廷が定めた全国の神社一覧「延喜式神名帳」に記載されている歴史ある神社だ。集落も一見して古く、白壁に石垣、蔵造りの家並みが続く。道幅は狭まる一方だ。
試しに一番狭そうな場所を選び、道幅を測ってみた。2.9メートル。車1台通るのがやっとだ。2010年の道路交通センサスによると、この付近は1日に約5000台の自動車が通る。事故は起きないのだろうか。