青森市で大間マグロを提供する居酒屋「いなげ家」は、マグロ頭部の肉も刺し身盛り合わせにして出している。大間町出身の主人、吉田清敏さん(62)は「地元の人間はマグロに誇りと愛着を持っている。トロ以外にもおいしい部位があることを知ってもらいたい」。
頭部は丸ごと「カブト焼き」にすることがあるが、焼き上がるまで2時間もかかるうえ、分量は5~6人分で、店で出すにはなかなかさばけない。「少しずつ刺し身にして出せばいろんな味わい方を楽しめるので、お客も喜ぶ」。
頭頂部の「脳天」は少し筋っぽいが、脂が濃くて柔らかい。「頬(ほほ)」は筋肉質で歯応えがある。「目玉の周り」は淡く柔らかい口当たり。そして「目玉の後の筋肉」はシャリシャリした食感だ。赤身や大トロと盛り合わせて1800円で、少し得した気分になった。
■イベントでお得にゲット
東京などでの「人気過熱」をよそに、地元では大間マグロを多くの人に手軽に親しんでもらおうという企画が人気を呼んでいる。
大間町が観光客で一番の盛り上がりを見せるのが、観光協会の主催で毎年10月下旬に行われる「超マグロ祭り」。下北地方独特の餅「べこもち」やマグロステーキ、マグロ弁当を販売するほか、今年は近海の遊覧船ツアーも企画している。目玉は何と言っても、マグロの解体即売。毎回、1柵(約200グラム)2000~3000円で飛ぶように売れる。
もう一つが、8年間続くマグロ解体ショーイベント「日曜日はマグロだDAY」。今年は9月1日から10月20日までの毎週日曜日の午前と午後の2回行う予定。東北新幹線が青森の八戸まで開通したのを受け、商店街の活性化のために商店主や町役場職員、消防団員などマグロ漁に直接関わりのない多彩なメンバーがボランティアで始めた。赤身やトロといった刺し身にして100グラム800~1500円で販売、1日100人ほどの観光客が買っていく。
実行委員会代表でパン店を営む宮野成厚さん(57)は「高いばかりが大間のマグロではない。大人数を集めるイベントではないが、少しでもたくさんのお客さんに大間に来てもらい、大間マグロや町の魅力を知ってリピーターになってほしい」と話している。(青森支局 住谷史雄)