「迷宮」中野ブロードウェイ、アキバ超え成るか?

「焼き肉はできないかな」――。中野ブロードウェイで若手芸術家のギャラリーを展開する村上氏が次に出店を見据えるのは接待にも使える本格的な飲食店だ。中野のギャラリー運営を担当する当麻篤マネジャーの携帯電話にはひっきりなしに村上氏から着信があり、次々と検討項目の指示が出る。

村上氏が13年出店したカフェには外国人の姿も。写真中央は当麻マネジャー

日本のポップカルチャーを芸術に昇華させたと評価される村上氏と焼肉店は一見つながらないが、海外では著名な画廊が飲食店を運営していることは珍しくない。

村上氏が芸術家として所属するフランスの画廊、エマニュエル・ペロタンもその一つ。VIPを接待するためで、飲酒や音楽を楽しむバーやクラブを持つこともある。

「日本のアート・マーケットを世界水準に」と願う村上氏にとって中野ブロードウェイはギャラリー展開の格好の実験場だ。

最初の出店は2008年。来日したVIPに日本のサブカルを紹介する応接室を設けた。当初は秋葉原を出店先の候補に考えていたが、雑居ビルの立ち並ぶ街中の引率は難しい。

思いついたのが一つのビルで完結する中野ブロードウェイで、これが好評を得た。10~12年にギャラリーを追加出店。13年にはカフェも開いた。

ギャラリーには漫画やアニメなどに影響を受けた若い芸術家たちの作品が並ぶ。日本の現代アートの登竜門として世界から注目を集める。

中野ブロードウェイ商店街振興組合の青木武理事長は「村上氏が人の流れを変えた」という。「美大生など美術関係者が増えたし、何より外国人を見かけることが多くなった」

コンパクトな「迷宮」、魅力に

こうした外国人客はさまざまなサブカルに興味津々だ。

「平日にも外国人が来店するようになった。今まで無かったこと」と話すのはメード喫茶「黒猫メイド魔法カフェ」の担当者。スマートフォンのカバーなどにアニメキャラクターを印刷するサービスを手掛けるプリントマウスでも「ふらっと来店して身ぶり手ぶりで発注していく外国人が結構な数いる」

一方の秋葉原では、外国人向け観光案内所に「アニメやコスプレに興味があるのに、どこにいったらいいのか分かりにくい」との苦情が舞い込むことがあるという。表通りの免税店には外国人がたくさん来店しているが、奥まった雑居ビルにある個性的なサブカル店にたどり着くのは難しそうだ。

サブカルの街として「小さなアキバ」とみられがちな中野だが、ブロードウェイを中心にしたそのコンパクトさが、かえってアキバにはない魅力につながっているようだ。(桜井佑介)

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