男性がまず変化を グラットン教授が語る女性の未来「ワーク・シフト」著者

2014/7/13
これからの個人の働き方や企業のあり方について著書などを通じて提言しているロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授。6月に来日したグラットン教授に、日本企業やそこで働く女性がより豊かな未来を迎えるための処方箋を聞いた。
Lynda Gratton 人材論、組織論の第一人者。世界で最も影響力ある経営思想家「Thinkers50」に選ばれている。「ワーク・シフト」は日本でビジネス書大賞2013受賞

――著書「ワーク・シフト」で、高齢化やグローバル化、テクノロジーが進んだ未来の働き方として、時間に追われ稼ぐための仕事ではなく、価値ある経験を主体的に選ぶ働き方へのシフトを勧めた。日本人の働き方をどうみるか。

「昨年、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)と共に世界各国の若者6万5000人を対象にアンケート調査を行った。日本の若者は群を抜いて長時間働いていた。そして彼らにとって職場にいるということを見てもらう、認識してもらうということが重要だと。明らかに他国よりも長時間働き、全く違った群にいるのが日本の若者だと言える。理由は社風であるとか、他社も長時間労働しているので自分たちも長時間労働しなければいけないという回答だった」

――日本はシフトが進んでいないと。

「私の『ワーク・シフト』は日本でもよく読まれた。今回来日して思うのは、多くの日本人が変わりたいと願っている、しかしその変革を遂げる自信がないと。そのためにもリーダーが絶対不可欠だ。そしてシフトをリードしたところが模範になっていくのだと思う」

――新しい働き方をリードするのは?

「世界各国の若者の間で男女問わず、より多くの時間を子どもと過ごしたいと願う人が増えてきている。その意味で、女性の働き方や職場環境の変化をリードするのは男性だ。男性がもっと子どもといたい、つまり親業をしたいと思うと、その結果、女性の働き方が変わる。日本でも男性が声をあげて、自分は早く帰宅したい、子どもと一緒に時間を過ごしたいと言えば、おのずと女性のワーク・シフトも起こってくるだろう。少なくとも米国では男性が女性のワーク・シフトを促すと言われている」

――組織の幹部層は子育て世代ではないので、なかなか変わらないのでは。

「経験軸が全く違うので、世代間での摩擦はあると思う。若い世代は技術を駆使して育った世代だし、管理層はさほど子どもと時間を過ごさずにきた。その結果、夫婦関係も世代間で違いがある。今の若いY世代と呼ばれている人たち(注:1980~95年ごろの生まれ)は、特に欧米諸国で言えることだが、働く女性と結婚することが多い」

――男性が新しい働き方をリードするということだが、女性だけでは変われないのか。

リンダ・グラットン ロンドン・ビジネススクール教授

「政府、企業、女性、男性の4つが互いに自分の役割を果たすことによってシフトを実現できる。例えばノルウェーの政府は、企業の経営陣の何割が女性でなくてはいけないということを法制度として整備している。そういった環境が整うと、次に企業、女性、男性といった形で進んでいく。日本の政府は一歩を踏み出したと思うので、その効果を今度は企業、そして女性、男性という形で落とし込んでいくことが重要で、この4つの連動がシフトを起こすには不可欠だ」

「これまで日本企業は女性の能力をフル活用していないと海外で認識されていた。例えば、欧米企業が日本に進出すると、とても能力の高い女性を雇えるので喜んでいた。日本の有能な女性は欧米諸国の多国籍企業に雇用されているというのが一般的な認識だったのではないか。日本企業にとっては大きな損失だが、欧米企業にとっては大きなプラスだった」