2014/6/14
IT知識を生かし、派遣社員として働く荒木直美さん(東京都渋谷区)

荒木さんが利用したのは、派遣・職業紹介サービスの「しゅふJOBエグゼクティブ」。主婦派遣のビースタイル(東京・新宿)が、管理職や企画職、専門職の経験があり、過去の年収が500万円以上の女性向けに2012年に立ち上げた。

主な派遣先は採用力の弱い中小企業や、新規事業を立ち上げたいベンチャー企業。たとえば年収800万円の人材を雇うにはコスト面のハードルが高い中小企業でも、週3日の時短勤務なら低コストでハイスキル人材を雇える。登録者は500人に迫り、成約ものべ100件にのぼる。ビースタイルの三原邦彦社長は「単純作業ではなく、戦略や新規の企画を立てるなど、仕事を作り出せる人材を企業も求めている」と話す。

女性の労働力率を示すグラフは子育て期が谷となる「M字カーブ」として知られる。30代以降は緩やかに上昇するが、就労形態は非正規が最も多く、単純作業のパートなどが中心だ。この層の女性が短時間でもスキルを生かした仕事ができれば、女性、企業双方にとって利点は大きい。

ネット経由で仕事を担えるクラウドソーシングも、スキルを生かして働く時間や仕事量を選びたい女性には追い風だ。

徳島県に住む中塚美里さん(29)は、08年に夫の転勤を機に仕事を辞め、以来2児の子育てに追われてきた。「社会との接点を持ちたい」と考え、今年からクラウドソーシングを活用してライターの仕事をはじめた。稼ぎは月数万円だが「将来的に本腰を入れて働くためのリハビリのようなもの」と話す。

東京都在住のデザイナー、杉田小絵さん(51)は12年秋からクラウドソーシングでチラシ作成やウェブデザインを手掛ける。クラウドでの仕事が継続的な取引につながり、現在は世帯の主な収入を確保できるという。

当然こうした働き方はリスクも伴う。収入は不安定になりがちで、企業にとって使い勝手がいいだけの立場になるリスクもある。中小企業診断士の小紫恵美子さんは「契約などのトラブルに備え、弁護士など人脈を持つことも重要」と話す。

柔軟な働き方を求める女性が多いのは、夫婦の家事分担が偏っていることや、硬直的な働き方しか許容しない企業が多い現実の裏返しでもある。時間や雇用形態にとらわれない働き方や企業の外部人材の活用が広がれば、女性の活躍機会拡大につながるのはもとより、男性を含め長時間労働が基本だった働き方を変える契機にもなり得る。(井上円佳)

■時間、仕事量などを自由に選ぶ働き方の注意点
・自分の病気や出産などで収入が途絶えることもあるので、保険や貯金で備える
・フリーランスは休みを意識的に取る。24時間365日仕事にもなりかねない
・契約書を確認して仕事を始める。クラウドソーシングなどでは追加作業の費用負担なども明確に
・トラブル発生に備え、弁護士、税理士、ユニオンなど個人で相談できる先を確保しておく
                 (中小企業診断士・小紫恵美子さんへの取材などをもとに作成)