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命のリレーの尊さ感じて 「ある精肉店のはなし」 監督・纐纈あやさんに聞く

2013/12/6

 大阪府貝塚市で7代にわたり精肉業を営んでいる家族を題材にしたドキュメンタリー映画「ある精肉店のはなし」が11月29日、公開された。これまでタブー視されがちだった、牛のと畜に正面から向き合った作品だ。物珍しさや差別の問題をことさらに主張するのではなく、カメラは家族の日常を淡々と追う。作品は釜山国際映画祭と山形国際ドキュメンタリー映画祭に正式出品された。日本映画監督協会の崔洋一理事長は「厳しくも神々しい命のリレーの尊さを教えてくれた」と評価する。撮影の経緯や映画を通じて伝えたいことについて、監督の纐纈(はなぶさ)あやさんに聞いた。

監督の纐纈あやさん  

(聞き手は商品部・高田哲生)

――牛をと畜するシーンについて残酷といった印象はほとんど感じませんでした。手の動きなど、スクリーンに引き込まれます。

 「私自身、この映画を撮りたいと思ったきっかけが、と畜という作業に感動したからです。友人から声をかけられてと畜の見学会に行ったのが始まりです。と畜から私が想像していた当初のイメージとは全然違って、現場は緊張感がありながらも生き生きしていました」

 「撮影させてもらった『北出精肉店』の北出新司さんたちは重労働を全身全霊をかけてやっていた。今の牛肉生産では分業体制が当たり前になっています。ナイフ1本で牛をみごとに解体できる人は日本にどれだけ残っているでしょうか。解体の手際には美しささえ感じます。2012年に市立のと畜場が閉鎖されたため、北出さんたちもと畜業を終えることになりました。新司さん自身が言っているように、それまで残っていたことが奇跡的だったのかもしれません。日々、肉を食べて生きているわたしたちは一度はみておくべきだとも感じました」

――撮影の許可をもらうまでに半年かかったそうですね。

 「北出さんの家族を取り上げるということは、被差別部落の歴史と向き合うことと切り離せないからです。北出さんの家族だけではなく、地域ともよく相談する必要がありました。また撮影する私たちも大きな責任をともないます。映像化してなぜ人に見せるのか、どうやって見せるのかを深く考えました」

 「北出さん家族からは、と畜は暮らしの一部であり自分の職業や技術が特別だといった気負いは感じませんでした。こうした自然な人たちが対象なら映画として成立するのではないかと思いました。差別はいけない、などと声高に叫んだり、何かの結論が先にありきでつくったりするのではないということを理解してもらいました。初監督した前作をみてもらうなどして、なんとか撮影の許可をもらいました」

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