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近大の完全養殖マグロ、大阪に店舗 人気の味は

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NIKKEI STYLE

4月下旬、大阪・梅田にオープンした複合施設「グランフロント大阪」。連日盛況のなか、ひときわ注目を浴びているのが産官学の技術交流拠点「ナレッジキャピタル」に入居する養殖魚専門のアンテナショップ、「近畿大学水産研究所」だ。30年以上の試行錯誤を経て近大が開発した完全養殖のクロマグロが食べられる初めての店舗である。

開店15分で売り切れ 「夢のマグロ」に長蛇の列

5月下旬の土曜日午後4時。夜の営業開始にはまだ1時間もあるのに、オープンバー風の店先には既に長蛇の列ができている。先頭は大阪府豊中市からやって来たという高齢の夫婦。ご主人は「話のタネに完全養殖のマグロを食べてみようと思って。前を通るといつも大勢並んでいるので今日は意を決して早く出てきた」と笑う。

羽島俊之店長によると「昼は200食、夜は150食程度を用意しているが、開店から15分後には売り切れてしまう」。6月末までは予約分も満席。通りすがりの来場者も店舗の写真を撮ったり、店頭に設置したタッチパネルで「完全養殖クロマグロ」の解説を読んだりと、ちょっとした観光スポットの趣だ。

日本で食べるマグロには複数の種類があり、スーパーや回転ずしでおなじみなのは天然物のメバチやキハダ。クロマグロは日本のマグロ市場の1割しかない高級品だ。

脂の乗ったトロが取れ、商品価値も高いため、天然物に加えて日本や地中海、メキシコなどで育てた養殖物も多く流通している。養殖の期間や出荷時期は地域によって異なるが、いずれも天然のクロマグロを漁獲し、エサを与えて太らせてから出荷する。

天然資源の漁獲がつきものの従来の養殖に対し、資源への負荷を大きく抑えられるのが近大が実現した「完全養殖」だ。

「最初だけ天然クロマグロの稚魚を漁獲して成魚に育てて卵を産卵させ、生まれた稚魚を再び成魚に育てて産卵させる。つまり、天然の2世代後からは天然資源を損なわずに再生産のサイクルを確立できるわけです」。近大水産養殖種苗センター大島事業場(和歌山県串本町)の岡田貴彦事業場長は解説する。

苦節32年 試行錯誤が実を結ぶ

1970年に着手したものの、完全養殖までの道は険しかった。

大きな体に似合わずデリケートなマグロは、人間が触ったり、いけすの網にこすれたりしただけでも皮膚がただれて死んでしまう。天然の幼魚をいけすに収めるだけでも数年を要した。いけすに入れても、夜間、海沿いを通る車のライトにパニックを起こし、網に激突して全滅したこともある。

1980~90年代にかけては10年以上にわたって卵が採取できず、途方に暮れた。やっとのことで人工ふ化までこぎ着けると、稚魚の共食いに悩まされた。巨大な台風や東日本大震災といった天災でも大きな被害を受けてきた。

「研究開発」という語感が持つスマートなイメージとはかけ離れた地道で泥臭い試行錯誤を重ねて問題をひとつずつ解決し、完全養殖を達成したのは32年目の2002年。以来、成功率の向上やエサの改良による肉質の改善も重ね、産業化への道筋をつけた。

完全養殖マグロは「赤身3割・中トロ5割・大トロ2割」

完全養殖が成功した当初は脂が乗りすぎたきらいがあったが、今では赤身3割、中トロ5割、大トロ2割とバランス良く取れるようになってきた。

多くの有力な研究機関や水産会社がクロマグロの完全養殖に挑戦しているが、実績では近大が群を抜く。岡田事業場長は「成功の最大の要因は情熱」と胸を張る。知名度も上がり「最近、近大マグロはどこで食べられるのかという問い合わせが増えていました。アンテナショップをつくりたいという機運が高まり、このたびの出店につながった」(近大広報部の角野昌之課長)という。

筆者が食べてみたのは「近大選抜 海鮮丼」。マグロはもちろん、シマアジやハマチ、マダイなど近大で育った養殖魚を一通り味わえるという看板メニューだ。

マグロはほどよく脂が乗り、食べやすい。運動量の多い天然物に比べると身が軟らかい印象を受けるが、最近は軟らかくて脂の多い養殖物の方が好きという消費者も多く、その辺は好み次第。植田克己料理長は「養殖物であっても季節によって食感や脂の多さは変わる。一般的な養殖クロマグロに比べ、近大マグロはいけすでの密度が低く、肉質が良くなる大きなサイズでの出荷も多いので、食材としても魅力的」と話す。

天然クロマグロの漁獲量、12年で半減

日本には養殖魚は天然魚よりも格下という根強い天然信仰がある。羽島店長は「開業前、養殖魚だけを提供する店というのはなかなかのチャレンジだと思っていた。この盛況ぶりは予想以上」と驚く。平均的な客単価は昼が2000円弱、夜が4000~5000円で特に安いというわけではない。苦節30年以上の開発ストーリーが、最高の調味料になっている。

2012年の日本の天然クロマグロの漁獲量は約8600トンで2000年の半分程度の水準だ。1980年ごろまでは年間4~6万トンで推移していたから、乱獲などにより、いかに資源が減ったかがうかがえる。

2010年には日本が輸入する大西洋クロマグロも、国際商取引を規制するワシントン条約の対象になりかけた。天然の漁獲量減少と反比例するように、日本のクロマグロ養殖は直近10年で4~5倍に拡大。12年の出荷量は9000トン超に増えたが、マグロ資源への国際的な関心の高まりを受け、水産庁は天然資源の漁獲を伴う養殖を現状以上に拡大させないとの方針を打ち出している。

水産業界には「資源が減っているのなら消費を減らせばいいだけ。そもそもクロマグロは日常食ではなく、希少だから価値がある」との声がある。それはひとつの見識だが、消費者のニーズが高いクロマグロの市場拡大を模索する機運が高まるのも自然な流れだ。

天然魚が減り、従来の養殖も頭打ちとなるなか、天然資源を損なわずに安定供給を目指すなら「完全養殖」は唯一の選択肢だ。首都圏では日本橋三越などで週に1回程度販売している。5月29日~6月4日には新宿高島屋の催事「大学は美味しい!!」でも提供する。売り上げの一部は今後の研究開発に充てられる。行列に並ぶ忍耐力が、研究の一助になるわけだ。

(商品部 吉野浩一郎)

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