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ウナギ界の救世主? 「ビカーラ種」を食べてみた

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NIKKEI STYLE

4月中旬、春の「土用の丑(うし)」に合わせ、ある大手スーパーの食品売り場に見慣れない商品が登場した。東南アジアに生息する「ビカーラ種」と呼ばれるウナギを原料にしたかば焼き製品だ。資源枯渇が懸念され、高騰しているニホンウナギのピンチヒッターとして、ウナギ市場の縮小に歯止めをかける切り札と期待されている。

ビカーラ種は1尾980円! 国産の半額以下

ビカーラ種の最大の特徴は1尾980円という価格にある。日本で主に食べられているニホンウナギは流通の99%以上が養殖物で、近年、養殖に使う稚魚(シラスウナギ)の不漁が続く。その結果、2011年末ごろから価格が高騰し、あっという間に数年前の2倍まで跳ね上がってしまった。

昨年はウナギ専門店やスーパーのかば焼き製品の値上げが相次ぎ、国産ニホンウナギのかば焼き店頭価格は1尾2千円前後からという相場が定着している。この高値で売れ行きは急減。スーパー向けのかば焼きを出荷する加工業者によると「前年比で売り上げ半減はざら、中には9割減という取引先もあった」。

昨年の国内市場規模は、ピークだった2000年の3割以下に縮小したといわれる。そんなところへ登場したのがビカーラ種だ。

フィリピンやインドネシアに生息 資源にはまだ余裕

世界には18種類のウナギがいる。ニホンウナギのほか、スーパーなどの中国産かば焼きの原料には、同国で養殖したヨーロッパウナギも使われる。姿、味ともニホンウナギに近いが、資源の状態は芳しくない。

昨年は北米やアフリカなどからも天然の外国産が輸入されたが、見た目を含めてニホンウナギとは異質で脂も少なく、その場しのぎの意味合いが強かった。

一方、フィリピンやインドネシアに生息するビカーラ種は資源に比較的余裕があり、稚魚の相場はニホンウナギの10分の1以下。これを育てて1尾千円以下で売ろうというわけで、日本や中国の企業が養殖に着手した。

稚魚の仕入れ値を考えれば店頭価格はさらに安くできそうだが、現段階では養殖手法が確立されていないため、歩留まりが低い。ニホンウナギなら1キロの稚魚から1トンの成魚が育つのに対し「ビカーラ種は死んでしまうものも多く、育つのは250~300キロ程度」(ビカーラ種のかば焼き加工業者)。当面は1尾980円が限界のようだ。

ビカーラ種、業界の評価は上々

ウナギ業界の救世主として期待されるこの新顔ウナギ、ニホンウナギに比べると頭が大きく、体長が短い。業界関係者の評価は「ヨーロッパウナギほどではないが、北米のロストラータなどに比べるとニホンウナギに似ており、日本市場に定着する可能性は十分ある」となかなか高い。実際どれほどのものなのか。職場で試食会を開いてみた。

会場は電子レンジが設置された本社の社食。紙面作りが一段落した平日の午後9時すぎから決行した。

用意したのは日本国内で養殖・加工したビカーラ種(A)、スーパーで購入した中国産(B)、百貨店などで売られている老舗の国産(宮崎産)ニホンウナギ(C)という3種のかば焼き。中国産の原料はメーカーに問い合わせてみたが、同じ製品でもニホンウナギとヨーロッパウナギの2種類を使っているとのことで特定できなかった。試食会では4人の同僚に正体を明かさずに3種のウナギを出し、感想を聞いた。

ウナギ3種を名前伏せ試食 記者4人の感想は…

4人のモニターのうち、最年長のTさんはカツオ節を自ら削り、家族とのバーベキューの前には築地まで赴いて冷凍エビを仕入れるというこだわり派。4月に異動してきたSさんは「酒もウナギも大好き」という。少し太めの体形と柔和な笑顔はいかにも美食家の雰囲気を醸す。ときたまではあるがイチローに似ているといわれるI君は回りくどい物言いが特徴だ。最年少のM君はしばしば驚くような高価なすし屋に赴くが、感想を聞くとアンニュイな面持ちで「オレ、牛丼チェーンで満腹になる方がいいですよ」とこぼす健たん家である。

まずはA(ビカーラ種)を食べてもらう。かみしめるように食したTさんは「しっかりした歯応えで食べ慣れた味だ」とうなずく。Sさんは「スーパーで買う中国産に近い。悪くはないけど、風味がやや物足りないかな」。I君とM君は「ゴムのような歯応え」と似たような印象を得たようだ。

次はB(中国産)。一口食べるとみんな、アレッという表情を浮かべる。全員が「あまり食べたことのない味」という点で共通した。「タレがなければほかの魚と感じるかも」とTさん。Sさんは「ウナギっぽくはないけど、純粋に食材としてみたらおいしい」と高評価だ。M君は「これがビカーラですね」と自信満々で断言した。ど真ん中の直球に「ストライーク!」とコールする球審のような爽快感である。

最後にC(老舗の国産)。てかった感じのAとは対照的に、枯れた風情を醸す上品な姿に、食べる前から「これがウナギ屋で見るウナギに一番近い。きっと国産品だ」との声が上がる。ところが、箸を付けた4人にはたちまち困惑の表情が浮かび、沈黙が漂った。「もしかすると、僕らは、重大な過ちを犯していたのかもしれない……」。イチローを模したと思われる神妙な口調でI君がつぶやく。国産に期待していた圧倒的なうまさとは明らかに異なるようだ。「ちょっと後味が薄いよな。悪い意味じゃないけど」とTさん。Sさんは「確かに風味が感じられない。でも、これが国産に近いとは思う」。3人が淡泊な味との見解を示すなか、ひとり対極をいったのがM君だ。「これが一番脂が強いですね。脂をこってり盛るような養殖手法は中国とみました」。なるほど。

難しいウナギの格付け 玄人でも違い分からず

ご協力ありがとうございました。正解を明かすと全員が「エ~!?」と驚きの声を上げた。結局、3種を言い当てられた人はいなかった。

「もしかすると、僕らは、ビカーラを信じすぎていたのかもしれない……」とI君。根拠はないはずだが、ビカーラと国産は似たものだという先入観があったようだ。結果的にはビカーラと中国産を逆に答えてしまった。

中国産をビカーラ、ビカーラを国産、国産を中国産と勘違いしたM君は「僕、バカなやつみたいじゃないですか」と肩を落とす。I君と同じくビカーラと中国産を逆に答えてしまったTさんは「オレは最も安いビカーラが1番おいしかった」と苦笑し、Tさんと同じ回答だったSさんも「自分の味覚に自信が持てなくなった」と天を仰いだ。

でも気を落とす必要はない。「業界関係者にもたくさん試食してもらっていますが、私も含めて大概は違いが分かりません」とビカーラでかば焼きを製造する加工会社の会長。プロでも見極めは難しいのだ。

そもそも国産のニホンウナギに限っても、味は産地や養殖手法によって大きな差がある。活ウナギの分野では中国産や台湾産の評価や価格が国産を上回ることも多く、一般論として格付けするのは難しい。

四季ごとにある「土用の丑」の日

ここで土用の丑のおさらいをしておこう。「土用」というのは「彼岸」や「八十八夜」「入梅」などと同じく、古代中国に端を発する「五行説」に基づく暦の雑節のひとつ。春夏秋冬の移行期にあたり、四季の変わり目の約18日間が「土用」とされる。つまり年に4回あるわけで「春の土用」なら立夏前の20日間弱を指す。

「丑」は十二支に由来する。土用の期間中の各日に十二支を合わせ、丑と一致したのが「土用の丑」だ。巡り合わせ次第では1回の土用に2度の丑の日があることになり、2度目は「二の丑」と呼ばれる。今年は4月17、29日が春の土用の丑だ。

夏の土用の丑にウナギを食べる習慣は18世紀の知識人、平賀源内の発案と伝わる。

元来、天然のウナギは冬眠に向けて餌を食べ込む秋がもっとも太り、旬を迎える。養殖物がなかった江戸時代、ウナギ屋の主人から売り上げが細る夏の対策を相談された源内は、夏の土用の丑に、同じ「う」の付くウナギを食べるのが夏バテ対策になると売り込むように助言した。現在のキャッチコピーの源流といえるだろうか。

最近は夏以外の土用の丑にもウナギを売り出す店が増え、冒頭の「ビカーラ種」もこのタイミングでお目見えした。

今夏に向け、中国でもビカーラ種養殖の動き

夏の土用の丑に向け、中国企業が養殖・加工したビカーラ種のかば焼きを輸入しようという動きも活発になっている。日本鰻輸入組合(東京・中央)の森山喬司理事長は「今年は、ビカーラ種のように割安で資源にも余裕のある外来種が日本市場に広がる起点になるかもしれない。将来的には専門店が高価なニホンウナギ、スーパーなどの量販店が割安なビカーラなど、というすみ分けが進む可能性もある」と予測する。

考えてみれば、高級店が使う天然のクルマエビや本マグロと、スーパーや回転ずしが使う輸入養殖エビやメバチマグロの価格には10倍以上の開きがある。それに比べ、2~3倍に収まるウナギは格差の小さい魚種といえるのかもしれない。(商品部 吉野浩一郎)

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