活況のライブやフェス… ご当地アイドル最新事情
「あまちゃん」ブーム後も熱冷めず
地方都市に密着した活動を展開する「ご当地アイドル」が熱い。2013年のNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」ブームもあって、注目度が高まった。東京で定期的にライブ活動するグループも増えており、地方のフェス開催やメジャーデビューも相次ぐ。ご当地アイドルの最新事情を紹介する。
日本青年館で単独ライブ
1月25日。福岡発のロック系アイドル「青SHUN学園」が日本青年館(東京・新宿)でライブを開いた。日本青年館は大物アーティストが初めてホールコンサートを開く際に使う会場として知られ、かつてAKB48や、ももいろクローバーZも初めてのホールコンサートを開いた。ご当地アイドルが同地でライブを開くのは初めてという。4時間半の白熱のライブを約1000人のファンが満喫した。
青SHUN学園は「キッズ部」「初等部」「中等部」「高等部」など男女混合メンバーによる多彩なチーム編成が特徴。13年4月に発売した初の全国流通シングルCD「今、ここに立って!!」はオリコンデイリーチャート2位。ライブのパフォーマンスで楽しませて、ファンを開拓している。学園長でボーカルのSHUNさんは「AKB48、ももいろクローバーZに次ぐ、アイドル第3勢力をつくってみせる」と宣言。4月も日本青年館でライブを予定する。
ご当地アイドルを使った地域活性化を目指す一般社団法人「石川県オタク文化推進委員会」は4月26、27日に金沢市で「第2回北陸アイドルフェスティバル」を開く。観覧は無料のイベント。来春の北陸新幹線開業を控える金沢で、全国のアイドルファン同士の交流を盛り上げたい考えだ。
12年12月にデビューした金沢のご当地アイドル「おやゆびプリンセス」をはじめ、地元だけでなく全国から30組程度のアイドルが参加予定だ。旗振り役で「おやゆびプリンセス」のマネージャー、西良弘さんは「全国からアイドルファンを呼び集めるイベントにしたい」と話している。3月15、16日には前哨戦として「北陸アイドルカーニバル」を開く。昨年7月に開いた「第1回北陸アイドルフェスティバル」は2日間で40組のアイドルが参加、延べ5000人以上が来場した。
全国各地で活躍中のアイドルグループの情報をまとめた「全国あいどるmap2013-14」の編集を担当した山村哲也さんによると、ご当地アイドルは1990年代後半くらいに誕生した。盛り上がってきたのが2010年くらい。前年の09年にAKB48の「RIVER」が初めてオリコンチャート1位を獲得、2回目の紅白出場を果たすなど人気グループに。全国区の人気になったAKBにならって、劇場にお客さんを呼んでみせる手法をとるグループが増えてきた。さらにあまちゃんブームがあり、地元にお客さんを呼ぶ地域活性化の手段として増えてきた。
現在、ご当地アイドルで比較的知名度が高いのが、「LinQ」(福岡県)、「Dorothy Little Happy」(宮城県)、「Negicco(ねぎっこ)」(新潟県)、「ひめキュンフルーツ缶」(愛媛県)など。地元以外の人を呼び込むためには東京だけでなく、近県も含めてイベントに出向き、ファンをつかんでいかないと人気・知名度が広がっていかないようで、ほとんどの人気グループは東京で定期的にライブを開いている。青SHUN学園の所属事務所であるノーメイク(福岡市)の麻木万由社長は「子供たちの夢をかなえる箱舟。つまり、がんばった先があるユニットにしたい。となると、そういう仕事は東京しかない」と話す。
毎週誕生、400超に
日本ご当地アイドル活性協会が推薦する ブレイク間近のアイドル |
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「みちのく仙台ORI☆姫隊」(宮城) |
「水戸ご当地アイドル(仮)」(茨城) |
「CoCoRo学園」「BJハート」(群馬) |
「FUJI△PASSION」(山梨) |
「Star☆T」(愛知) |
「おやゆびプリンセス」「nIo」(石川) |
「せのしすたぁ」「ami~gas」(福井) |
「しんまち七色ばんど」(徳島) |
「きみともキャンディ」(香川) |
「ぴらのぱうるす&ぱっきゃまらんど」(沖縄) |
日本ご当地アイドル活性協会によると、ご当地アイドルの数は430。「毎週、全国どこかで1つは誕生している」というほど過熱気味。ご当地の範囲もどんどん狭くなっており、「なんとか町」のアイドルなど細分化しているのも特徴だ。
急増している背景には地方ならではの事情もある。両親や学校の関係で東京には出て行けないという子が地元アイドルをやっていることが多いのだ。両親としても「タレント活動は不安だが、地元で活動しくれるのなら、安心」だ。山村さんは「以前だったらアイドルになりたいという願いはあっても、できない子が多かった。きれいな子が埋もれていた。そんな子がご当地アイドルができたことで日の目をみた」と話す。
各グループの台所事情はどうか。山村さんは「交通費など活動に必要な経費を考えると、ほとんどのグループが収支トントンかマイナスだろう」とみる。おやゆびプリンセスの場合、マネジャーの西さんとメンバーが業務委託契約を結んでおり、報酬は歩合制。「最も稼いでいる子の場合、土日が主な活動で月10万円前後」という。現在、収入の8~9割を物販が占めるという。西さんは「ライブのチケット代(入場料)とCDの売り上げでやっていけるグループをつくりたい」と話す。青SHUN学園も「交通費で利益が飛んでしまう。赤字状態で今後の課題」(ノーメイクの麻木社長)という。
今年注目されているアイドルはどれか。山村さんが一番の注目株にあげるのが、「GALETTe(ガレット)」(福岡県)。小倉の劇場を拠点に活動している。ちょっと変わっていて、メンバーそれぞれが別のグループで活動していた。2013年結成。ソロ活動していたミュージシャンや大分のアイドルユニットの絶対エース、元HKT48メンバーなど5人が事務所の垣根を越えて結成したユニット。それぞれが経験のあるメンバーなのでダンスや歌がうまいなど完成度が高い。「地元のスーパーグループになっている。生まれかたが新しい」(山村さん)。「GALETTe」の今後の人気次第で、ほかの地域でも既に活躍しているアイドルの選抜ユニット結成のような流れが生まれるかもしれない。
過熱する「原石探し」
話題の「天使すぎるアイドル」橋本環菜さんが所属する福岡発のアイドルグループ「Rev.fromDVL」はメジャーデビューが決まった。日本ご当地アイドル活性化協会がオススメする「みちのく仙台ORI☆姫隊」(宮城)も面白そうだ。「スタイルが新しい!サーカス的なダイナミックなステージング」(同協会)という。ブラジルでワールドカップが開かれる今年はブラジルと日本の混合8人組「BJハート」(群馬)にも注目が集まりそうだ。
大手事務所も入り乱れて地方にいるアイドルの原石探しが始まっている。AKBが各都道府県の代表をオーディションする「チーム8」プロジェクトを始めたほか、ももクロが所属する事務所スターダストプロモーション芸能3部が名古屋の「チームしゃちほこ」、大阪の「たこやきレインボー」に続いて、福岡にもつくるとささやかれている。ご当地アイドルが全国に広がった昨年のブームとは違った動きもみられ、さらに注目が集まりそうだ。(村野孝直)
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