イワシは大衆魚か高級魚か 日本近海の水温が左右

マイワシの漁獲量は振れ幅が極端

好不漁はどんな魚にも付き物だが、マイワシはその振れ幅が極端だ。

「マイワシバブル」といわれる1970~80年代にかけては全国で年間100万トンを超える水揚げが続いた。ピークの88年は448万トン。2012年は全魚種合わせた海での漁獲量でも373万トンで、この年のマイワシに及ばない。

当時、全国トップの水揚げ港だった北海道・釧路では「海が盛り上がるほどのマイワシがいた」(市場関係者)という。鮮魚や加工品として人間が食べられる量をはるかに超え、大半は養殖魚のエサなどに回った。

ところが90年代以降、マイワシの漁が急減する。2005年には2万8千トンと17年前のわずか0.6%まで落ち込んだ。この頃のマイワシは「高級魚」どころか「幻の魚」になりかけていた。

当初、マイワシが取れなくなったのは「乱獲」が原因とされた。確かにその要素もあったようだが、あまりに大きな漁獲の波はそれだけでは説明がつかない。現在、定説となっているのは、大気や海洋など地球規模の環境が数十年周期で変動するという「レジーム・シフト」だ。東北大名誉教授の川崎健氏が提唱した理論は『イワシと気候変動』(岩波新書)に詳しいが、無理を承知で要約すると以下のようになる。

イワシは海のリトマス紙

北太平洋上にあるアリューシャン低気圧の活動の強弱は、海水温に数十年単位での変化をもたらしている。日本近海の水温が低い期間は海中の活力が向上し(冷たいレジーム)、水温が高い期間は活力が低下する(暖かいレジーム)。

海が活性化すると水中のプランクトンが増殖する。ほとんどの小型回遊魚は動物プランクトンだけを食べるが、マイワシは魚類の中では比較的「原始的」な部類に属することもあり、食物連鎖のピラミッドの底辺により近い植物プランクトンも食べる。「活発な海」の恩恵を最大限に受けるのがマイワシというわけだ。

裏を返せば、海の活性度が下がるともっとも打撃を受けるのもマイワシだ。海の活性度を知るリトマス紙がマイワシだと考えられる。

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現在は「暖かいレジーム」で活力低下 豊漁は続かない
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