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イワシは大衆魚か高級魚か 日本近海の水温が左右

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NIKKEI STYLE

日経新聞朝刊のマーケット商品面に「生鮮クリック」という小ネタのコーナーがある。生鮮市場の担当記者が個人的な興味や嗜好、風物詩的な意味合いなどを考慮して季節の魚介類や青果物の動向を紹介している。先日、「今年はイワシが豊漁で安い」と書いたところ、読者から「しばらく前にはイワシが少なくて高級魚になっていると報道されていたが……」との指摘を受けた。イワシは大衆魚に戻ったのだろうか。

7年前は1匹1200円も、現在は50~60円に

「マイワシ」「高級魚」のキーワードで過去のデータベースを検索してみると多くの記事が出てくる。例えば日経ではこんな具合だ。

「マイワシも高級魚!? 築地で1匹1200円前後に」(2006年5月23日夕刊)

記事によると、当時はマイワシの不漁が続き、この日の東京・築地市場では最高値が1キロ5500円、1匹換算で1200円だった。1キロ5千円といえば上物のクロマグロ並み。「高級魚」の目安は2千円とされるから少なくとも価格帯ではバリバリの高級魚といっていい。

それから7年。足元の築地相場は高値で1キロ千円程度、多くは200~300円で前年同月より4割ほど安い水準だ。「大衆魚」の目安は500円だから大衆魚のど真ん中だ。鮮魚店では5匹300円といったところ。06年とは様変わりしている。

魚の値段はおいしいからといって高くなるわけではなく、まずいからといって安くなるわけでもない。少ないから高くなり、多いから安くなるのだ。例えば最近のウナギは、養殖に使う稚魚の不漁という少なくて高くなった代表例だ。

一方、多くて安くなった典型が足元のマイワシだ。5月の全国主要港の水揚げ高は前年より6割多かった。梅雨時期のマイワシは「入梅イワシ」と呼ばれ、1年でもっとも脂が乗る。商品価値が最も高い時期に価格が下がっているのだから「まさに食べごろ」(築地の卸会社)だ。

マイワシの漁獲量は振れ幅が極端

好不漁はどんな魚にも付き物だが、マイワシはその振れ幅が極端だ。

「マイワシバブル」といわれる1970~80年代にかけては全国で年間100万トンを超える水揚げが続いた。ピークの88年は448万トン。2012年は全魚種合わせた海での漁獲量でも373万トンで、この年のマイワシに及ばない。

当時、全国トップの水揚げ港だった北海道・釧路では「海が盛り上がるほどのマイワシがいた」(市場関係者)という。鮮魚や加工品として人間が食べられる量をはるかに超え、大半は養殖魚のエサなどに回った。

ところが90年代以降、マイワシの漁が急減する。2005年には2万8千トンと17年前のわずか0.6%まで落ち込んだ。この頃のマイワシは「高級魚」どころか「幻の魚」になりかけていた。

当初、マイワシが取れなくなったのは「乱獲」が原因とされた。確かにその要素もあったようだが、あまりに大きな漁獲の波はそれだけでは説明がつかない。現在、定説となっているのは、大気や海洋など地球規模の環境が数十年周期で変動するという「レジーム・シフト」だ。東北大名誉教授の川崎健氏が提唱した理論は『イワシと気候変動』(岩波新書)に詳しいが、無理を承知で要約すると以下のようになる。

イワシは海のリトマス紙

北太平洋上にあるアリューシャン低気圧の活動の強弱は、海水温に数十年単位での変化をもたらしている。日本近海の水温が低い期間は海中の活力が向上し(冷たいレジーム)、水温が高い期間は活力が低下する(暖かいレジーム)。

海が活性化すると水中のプランクトンが増殖する。ほとんどの小型回遊魚は動物プランクトンだけを食べるが、マイワシは魚類の中では比較的「原始的」な部類に属することもあり、食物連鎖のピラミッドの底辺により近い植物プランクトンも食べる。「活発な海」の恩恵を最大限に受けるのがマイワシというわけだ。

裏を返せば、海の活性度が下がるともっとも打撃を受けるのもマイワシだ。海の活性度を知るリトマス紙がマイワシだと考えられる。

現在は「暖かいレジーム」で活力低下 豊漁は続かない可能性も

川崎氏によれば1970年代後半から20年間続いた「冷たいレジーム」は90年代後半に終わり、「暖かいレジーム」へと切り替わった。年間3万トンに満たない2005年のようなどん底期を脱したとはいえ、近年のマイワシ水揚げ量は年間10万トン台。川崎氏は「今年の豊漁もあくまで『暖かいレジーム』の中での波と捉えたほうがいい」と説く。アベノミクスによる株高と騒いでみても、バブル絶頂の80年代後半とは次元が違うという世情と同じだ。

レジーム・シフトはある時、突然やってくる。数十年という周期を考えれば遠からず再びレジーム・シフトが起こっても不思議ではない。だが「冷たいレジーム」の到来がマイワシにとって幸せかといえば、そうとは限らないようだ。

というのも、現在の「暖かいレジーム」は種としてのマイワシ全体にとっては冬の時代でも、個々のマイワシにとっての住み心地は悪くないからだ。「個体数が少ないのでエサの奪い合いがなく成長も早い。『冷たいレジーム』のマイワシより身質が良いことも多い」(川崎氏)という。「冷たいレジーム」のイワシがバブル期のモーレツ社員なら「暖かいレジーム」に生きる魚は「ゆとり世代」。マイワシと日本社会、やはりどこか似ているような……。(商品部 吉野浩一郎)

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