女性向けアプリが増えるのもこのエリアの特徴だ。若者の街、原宿駅ではプリクラなどの写真シール作製機で撮影した画像「プリ画」を保存するアプリ「ピクトリンク」がはやっている。画像処理を駆使して、目を大きくしたり、肌を白くしたり。読モ(読者モデル)ならぬプリモの投稿写真コーナーもある。近くに代々木アニメ―ション学院がある代々木駅ではアニメや声優などのオタクグッズをオークションでお互いに売り買いできるフリマアプリ「otamart」が人気だ。「着なくなったコスプレ衣装を誰かに譲りたい」「マニアな嗜好過ぎてお店では買い取ってもらえない」。こんな時に写真を載せるだけで出品できるのがウリという。

新大久保駅は韓国料理の店が多いこともあって、外国語アプリが多い。韓国の無料漫画アプリ「Naver Webtoons」や中国で広がるSNS「QQ」のセキュリティーアプリがダウンロードされている。気になったのは店舗などの監視カメラ画像をスマホに転送できる「i-Smart Viewer」の人気が高いこと。

新大久保といえば、近年問題になっているのが民族差別的なヘイトスピーチ。監視カメラアプリの需要が治安の悪化と関係しているなら、やはり街は深い傷を負っていることになる。

下町は「多国籍」

「全く読めない・・・」。取材記者がもっとも驚いたのは、池袋駅から日暮里駅までの、都心の北東部にあたる下町エリア。まず池袋駅で登場した「ezen ehshig」は、歌手の写真にアラビア語を縦にしたような、見たことのない文字が並ぶ。調べるとモンゴルの伝統音楽を流すアプリだった。ニュースアプリ「新浪新聞」「騰訊新聞」は中国語と分かるが、巣鴨駅で登場したベトナム語の音楽視聴アプリ「Nhac Cua Tui」は一見すると何語か分からない人も多いだろう。

人気アプリは街の素顔を映し出す(東京・秋葉原)

なかでも目を引いたのがミャンマー人向けアプリだ。駒込駅で登場した「MYMC Radio」はインターネットラジオを使ったミャンマー音楽の試聴アプリ。田端駅や西日暮里駅で出てきた「iDhamma」は、なんとミャンマー人の仏教徒による礼拝アプリだった。ダウンロードすると、経典を読み上げる声が流れてくる。気になって調べてみると、東京23区のうち直近10年間でもっともミャンマー人の人口が増えたのは西日暮里駅のある荒川区。年初時点では310人と266人増えた。

終点の東京駅まで、合計29駅。アプリ検索を通して見えたのは、渋谷など巨大都市に外国人観光客が押し寄せる裏側で、実は下町からグローバル化していく首都東京の姿だった。東京都の外国人人口は今年1月1日時点で前年比3736人増の39万4410人。東日本大震災後の減少局面を経て、3年ぶりにこれまでの増加基調に戻った。米国人や英国人が減り続けるなかで全体を押し上げたのは、1年で2倍に増えて1万人に達しようとするベトナム人。東京は労働市場としても、アジア経済圏の一都市としての色合いをますます強めている。

六法全書アプリ、東大、慶大で人気

「近くで人気」検索には、その地域でしか使われないローカルアプリの発見という楽しさもある。たとえば東京大(本郷キャンパス)や慶応義塾大(三田キャンパス)では「e六法」という六法全書アプリがランキングに入った。早稲田大(早稲田キャンパス)では「WASEDA Mobile」という公式アプリが圧倒的な人気。教室の利用状況から通学バスの時刻表まで確認できる便利さが受けているようだ。広尾駅(港区)近くにある聖心女子大では「きせかえ時間割」という女性向けのデザインの時間割アプリのほか、おしゃれなカフェを検索するアプリもランクイン。それぞれの大学生の個性がにじみ出ているようで面白かった。

国会議事堂の裏にある議員会館前で検索すると、出てきたのは「国会DB」というデータベースアプリ。国会議員事務所の電話番号をスマホの「連絡先」に直接入れたり、選挙区や年齢などから議員を検索したりできる。

メールやスケジュールの管理から趣味、マネー取引に至るまで、スマホはいまや生活の大きな部分を占める。アプリのダウンロード情報は、その最新の動向を映し出す鏡だ。「近くで人気」検索機能で検出されるダウンロード履歴は、何日前までのものか、半径何メートルに反応するのか、アップルは詳細を明らかにしていない。だが検索結果は確かにその周辺一帯の空気を映し出していた。あなたの街はどんな素顔を持っているのか。一度のぞいてみてはいかがだろうか。

(高見浩輔、村野孝直)

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