意外と知らないクジラ肉のこと 流通ルートや味は?

高タンパクで低カロリー、疲労に効く成分も

栄養面でも優れた食材だ。一般の食肉に比べるとカロリーや脂質、コレステロールが少ない反面、唾液によってうま味成分に変わるタンパク質は多い。血液をサラサラにするエイコサペンタエン酸(EPA)や脳を活性化するドコサヘキサエン酸(DHA)など不飽和脂肪酸にも富んでいる。

最近、特に注目されているのがクジラのアミノ酸が多く含む「バレニン」という成分だ。大海原を5000キロ以上泳ぎ続けるクジラのスタミナ源となっている成分で、昨年の研究機関の実験では、人間にとっても持久力の向上や疲労予防などの効果があることが分かった。太田胃散ではバレニンを含む健康補助食品を販売している。

捕鯨推進派「適正に捕獲しないと生態系が崩れる」

食材としては一級品のクジラだが、いざ食べるとなると国際世論は真っ向から対立する。

実は「商業捕鯨が中断されるキッカケとなった資源問題は科学的には既に解決されている」(東京海洋大学大学院の加藤秀弘教授)。捕獲頭数が減った結果、南極海のミンククジラは適正な水準を大きく超えて増えているのだ。

クジラは自然界の食物連鎖の頂点に立つ。増えすぎたクジラは人間が消費する水産物(年間9千万トン)の3~5倍を食べており、適切に捕獲しなければ海の生態系を崩すことになる。将来、世界的な食料不足が起こる可能性もある以上、捕鯨の技術やクジラの食文化を絶やすべきではないというのが日本を筆頭とする捕鯨推進派の主張だ。

反捕鯨国「頭のいいクジラを捕るのはかわいそう」

一方、オーストラリアやニュージーランド、米国など反捕鯨国の言い分は「頭のいいクジラを捕るのはかわいそう」という感情論に訴えるもの。とはいえ、かつては彼らも鯨油を目的に世界各地で大がかりな捕鯨を展開していた。それが反捕鯨に転じた背景には、環境保護を旗印にしたい政治的な思惑もある。シー・シェパードは捕鯨を妨害することで多額の寄付を得ている。

国際司法裁判所が日本の調査捕鯨の差し止めを命じたのは「純粋に調査目的とはいえない」との判断による。日本は南極海での調査捕鯨に年間1035頭の捕獲枠を設けていたが、近年はその3割も捕っていなかった。「調査に必要として申請していた捕獲枠を使い切らない操業は、余剰感が強まっていた鯨肉の露骨な在庫調整とみなされた」と国際東アジア研究センターの小松正之客員主席研究員は解説する。

こうした要素は確かに否定できない。しかし、当初は90年までに検討することになっていた商業捕鯨の再開を反捕鯨国は資源評価を無視して拒み続けている。国内には、日本が反捕鯨国を約束違反で訴え、商業捕鯨の再開を目指すべきとの主張もあり、両陣営の議論はなかなかかみ合わない。

双方の主張を踏まえたうえで食べるべきか否か。最終的には個人の選択となるが、態度を決めかねている人はぜひ一度、味わってみることを勧めたい。(吉野浩一郎)

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