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意外と知らないクジラ肉のこと 流通ルートや味は?

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NIKKEI STYLE

今年3月、日本が南極海で続けてきた「調査捕鯨」に国際司法裁判所(ICJ)が待ったをかけた。以来、クジラがたびたびテレビで取り上げられている。懐かしげな微笑を浮かべ「肉がなかった昔はね、タンパク源として給食でクジラをよく食べたもんですよ」と語る中高年のコメンテーターに、「でも私たちの世代って、ほとんど食べたことないんですよね」とどこか冷めた調子の若い女子アナウンサー。1960年代に年間20万トン以上あった日本のクジラの消費量は現在5000トンにも満たない。クジラは今、どこでどのように流通しているのか。

民間企業の共同船舶シェア7割、卸売市場など通じて販売

資源減少を理由に国際的な商業捕鯨の一時中断(モラトリアム)が決まった1982年以降、日本は「調査」を理由に捕鯨を続けてきた。操業を担っているのは一般財団法人の日本鯨類研究所(東京・中央)と、大手水産会社の捕鯨部が合併してできた民間企業の共同船舶(同)だ。両者で役割を分担しており、日本鯨類研究所が調査・研究、共同船舶が船の運航や捕獲、鯨肉の販売を受け持っている。

南極海と北西太平洋に年1回ずつ、数カ月ずつの航海をしてクジラを捕獲し、生態系の解明に努めている。捕ったクジラは副産物として加工販売して年間60億円近くかかる調査費用の半分程度を回収し、残りの大半は国からの援助で賄っている。

捕鯨では、大砲でクジラに銛(もり)を打ち込み、船のスロープを使って甲板に引き揚げる。船上で加工凍結して持ち帰り、築地のような卸売市場に出荷するほか、加工メーカーや外食店への直接販売もする。

共同船舶のシェアは7割程度。残りは2006年に商業捕鯨を再開したアイスランドからの輸入品や北海道・網走や宮城県・鮎川、和歌山県・太地など日本沿岸で捕獲したものだ。沿岸では調査捕鯨に加え、ツチクジラなどモラトリアムの対象になっていない鯨種も含まれる。共同船舶の半分を占める南極海産が消えれば、流通量が一段と縮小することになる。

戦後はナガスクジラ、最近はイワシクジラが中心

クジラの主役は時代とともに変わってきた。戦後は体長30メートル前後にもなる大型のナガスクジラ。調査捕鯨になってからは10メートル未満のミンククジラが中心だったが、最近は北西太平洋で捕る20メートル前後のイワシクジラがメーンになっている。過激な反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害などにより、南極海でのミンク捕獲が大幅に減ったためだ。

イワシクジラといっても一般的な認知度は高くない。共同船舶営業部の小泉龍人チームリーダーによると「色鮮やかなのが最大の特徴。あっさりとしたミンクに比べると濃い味です。殺菌装置など船の処理設備が改善された最近は、クジラ特有の臭みがなくなったと評判で、売れ行きは伸びています」とのこと。

全国展開する北辰水産(千葉県柏市)のデパ地下店舗や東京・御徒町の「吉池」、錦糸町の「魚寅」といった有名鮮魚店に加え、新規に扱い始めるスーパーも増えているようだ。販売価格は赤肉で100グラム398円といったところ。国産牛の切り落としや冷凍メバチマグロと同等の価格帯だ。

上等な牛肉を思わせる背中の赤肉

何はともあれ論より証拠。都内で屈指の品ぞろえを誇るクジラ料理店「くじらのお宿 一乃谷」でイワシクジラを試食してみた。

まずは刺し身の盛り合わせ。種類の多さにまずは驚く。「ウネス(腹部)」はまるで豚バラのベーコン。白と赤のまだら模様が印象的な「鹿の子(アゴの付け根)」は脂がのって弾力に富む。心臓は鶏のレバ刺しのような味わい。コリコリとした背中の皮(本皮)には磨いたばかりの革靴のようにテカテカと脂が光り、口の中で溶けていく。

一番量が取れる背中の赤肉は上等な牛肉を思わせ、最も高値で取引される尾肉(尾の身)はそこに和牛のような脂が入る。そういえば以前、捕鯨国のノルウェーを訪れた時に初めて尾の身を口にし、あまりのおいしさに仰天したものだった。

牛、豚、鶏の様々な部位の肉を1頭で楽しめるような多彩性はヒット曲を集めたオムニバスのよう。

刺し身・ステーキ・すき焼き…多彩な調理法

さらに特筆すべきは料理の万能性だ。刺し身に続いて出てきたのはレアに焼いた赤身のペッパーステーキ、鶏の軟骨のようなコリコリ感を楽しめるのどちんこ、淡泊なミズナを脂の多い鹿の子で包んだ巻物、赤肉のユッケなど。ほかにもすき焼きや天ぷら、竜田揚げなど調理法はキリがない。1人7000円払えば相応の満足感が得られるはずだ。

クジラに含まれるイノシン酸はしょうゆや味噌のグルタミン酸との相性が良い。

「クジラ食文化を守る会」の会長を務める発酵学者の小泉武夫氏は著書『鯨(げい)は国を助く』の中でその魅力をこう記している。

「焼いたクジラに醤油をさーっとかけると、それはそれは美味で、舌が踊り出して止まらない。私がちいさいころからずっと食べているクジラの味噌漬けも、食べながら口中が涎(よだれ)の洪水になるほど美味い」

高タンパクで低カロリー、疲労に効く成分も

栄養面でも優れた食材だ。一般の食肉に比べるとカロリーや脂質、コレステロールが少ない反面、唾液によってうま味成分に変わるタンパク質は多い。血液をサラサラにするエイコサペンタエン酸(EPA)や脳を活性化するドコサヘキサエン酸(DHA)など不飽和脂肪酸にも富んでいる。

最近、特に注目されているのがクジラのアミノ酸が多く含む「バレニン」という成分だ。大海原を5000キロ以上泳ぎ続けるクジラのスタミナ源となっている成分で、昨年の研究機関の実験では、人間にとっても持久力の向上や疲労予防などの効果があることが分かった。太田胃散ではバレニンを含む健康補助食品を販売している。

捕鯨推進派「適正に捕獲しないと生態系が崩れる」

食材としては一級品のクジラだが、いざ食べるとなると国際世論は真っ向から対立する。

実は「商業捕鯨が中断されるキッカケとなった資源問題は科学的には既に解決されている」(東京海洋大学大学院の加藤秀弘教授)。捕獲頭数が減った結果、南極海のミンククジラは適正な水準を大きく超えて増えているのだ。

クジラは自然界の食物連鎖の頂点に立つ。増えすぎたクジラは人間が消費する水産物(年間9千万トン)の3~5倍を食べており、適切に捕獲しなければ海の生態系を崩すことになる。将来、世界的な食料不足が起こる可能性もある以上、捕鯨の技術やクジラの食文化を絶やすべきではないというのが日本を筆頭とする捕鯨推進派の主張だ。

反捕鯨国「頭のいいクジラを捕るのはかわいそう」

一方、オーストラリアやニュージーランド、米国など反捕鯨国の言い分は「頭のいいクジラを捕るのはかわいそう」という感情論に訴えるもの。とはいえ、かつては彼らも鯨油を目的に世界各地で大がかりな捕鯨を展開していた。それが反捕鯨に転じた背景には、環境保護を旗印にしたい政治的な思惑もある。シー・シェパードは捕鯨を妨害することで多額の寄付を得ている。

国際司法裁判所が日本の調査捕鯨の差し止めを命じたのは「純粋に調査目的とはいえない」との判断による。日本は南極海での調査捕鯨に年間1035頭の捕獲枠を設けていたが、近年はその3割も捕っていなかった。「調査に必要として申請していた捕獲枠を使い切らない操業は、余剰感が強まっていた鯨肉の露骨な在庫調整とみなされた」と国際東アジア研究センターの小松正之客員主席研究員は解説する。

こうした要素は確かに否定できない。しかし、当初は90年までに検討することになっていた商業捕鯨の再開を反捕鯨国は資源評価を無視して拒み続けている。国内には、日本が反捕鯨国を約束違反で訴え、商業捕鯨の再開を目指すべきとの主張もあり、両陣営の議論はなかなかかみ合わない。

双方の主張を踏まえたうえで食べるべきか否か。最終的には個人の選択となるが、態度を決めかねている人はぜひ一度、味わってみることを勧めたい。(吉野浩一郎)

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