雄特有の声は小鳥のさえずりと同じく、雌を呼ぶ、なわばりを宣言するという意味がある。姿が似た種ほど違いが大きいという原則があり、4種のケースはこれに当てはまる。子育ては他人任せでも、生物は異種間では子孫を残すことができない。選ぶ側の雌が同種の雄を間違えないようにする必要があるのだ。
好物は毛虫、生存競争には有利
夜にホトトギスの声を聞いて驚く人もいるが、夏までの短期間に繁殖を終えなくてはならない野鳥たちには夜通しさえずるものは珍しくはない。そもそも野鳥は鳥目ではなく、渡る鳥の多くが夜に渡ることは以前も書いたと思う(太陽を背にして飛び続けるのはつらいだろうし、明るい時間帯はタカやハヤブサなどの餌食になりやすい)。
不思議なのは、繁殖成功率が低い野生の世界で、どうして他の鳥に卵を預けるような習性が進化し得たのかということだ。世界に140種ほどいるカッコウ科でも託卵するのは半分もいない。カッコウ科の共通点は、これもなぜだかわからないが、「前2本、後ろ2本」という足指だ(多くの鳥類では前3本、後ろ1本)。例えばアメリカで砂漠を走り回るミチバシリ(ロードランナー)もカッコウ科で、足指は前後2本ずつだが、子育ては自ら行う。
日本の4種は好みも不思議だ。毛虫が毛を生やしたのは、天敵である鳥対策の結果だと思うが、小さな段階ではよく食べられる。ただし、小鳥に捕食されずに大きく育った毛虫は諦める鳥が多いのに、彼らはそれをおいしそうに食べる。生存競争という観点からは他の鳥が好まない分、彼らには有利だろうが、仮親が毛虫を選んで給餌するとは思えない。実の親との親子期間がないので、好みも、雄特有の声も、本能的なものなのだろうか。
カッコウが減った要因として、越冬地の東南アジア方面の環境問題や日本で仮親になる鳥の減少が指摘されるが、毛虫の減少も関係しているのではないだろうか。
※イラストの出典「新・山野の鳥 改訂版」(日本野鳥の会発行)
(日本野鳥の会主席研究員 安西英明)
※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。