5月に巣立った野鳥のひなは早くも自立の時期を迎える。すでに大きさでは親鳥と区別できないので、声(シジュウカラの幼鳥はしわがれ声)や色(スズメでは親鳥より淡い)で気づくようにしたい。
ほかの鳥に子を託す不思議な習性
まだ親鳥を追いかけて餌をねだっているか、自力で採食しているかを観察していると、ちょうど学習段階の幼鳥が落ち葉や枝など、とても食べられそうにないものをつついていることがある。巣立ち後のわずかな親子期間に「何を食べたらよいか」「何が危険なのか」を学べるか否かは、その後の生死を分けるはずだが、親子期間がない不思議な鳥もいる。
ホトトギスはその代表的な一種。「ホットットギス」という鳴き声はもう聞かれただろうか。
東南アジア方面から渡ってくるホトトギスの声を町で聞くことができるのは、5月中旬~6月初旬の夜であることが多く、移動の途中だと思われる。カッコウとジュウイチも含めた「托卵(たくらん)トリオ」は飛来の時期が他の鳥と比べて遅い。それでもよいのは、自ら巣を作らずに、仮親に卵を託す特異な習性と、好物が大きな毛
虫であることが関係しているように思う。
なぜか飛来が早いツツドリを含めたカッコウ科の4種「託卵カルテット」の共通点は声が大きいこと。例えば、ホトトギスは主にウグイスに托卵するが、その多くが成功するようではウグイスが減ってしまうから、失敗することの方が多いはずだ。雄は複数のウグイスのなわばりを含めて自らのなわばりとしなければならない。広いなわばりを主張するには大声が必要になる。
これら4種は姿が似ている上、雌はどれも「ピピピピ」と鳴く。だが名前の由来になった雄の声を聞けば簡単にわかる。ジュウイチは「ジュウイチー」、ツツドリは筒をたたくように「ポポ、ポポ」と鳴く。