企業に女性幹部クオータ制 先進ノルウェーに聞くWの未来 世界が競う

世界で初めて、大企業の取締役会の一定数を女性とすることを義務づけるクオータ制を導入したノルウェー。これをきっかけに世界中で大論争が起き、フランスやイタリアなど追従する国が出た一方、強制的なやり方には反発も広がった。ノルウェーはなぜ導入に踏み切り、今の日本の議論をどう見ているのか。同国政府からの委託で調査を長年行い、世界中で講演する企業多様性センターのマリット・ホエル代表に聞いた。
ノルウェー政府の委託を受け、企業の女性登用をウオッチするホエル氏(オスロ)

――クオータ制はなぜノルウェーで生まれたのか。導入の経緯を教えてください。

「まず背景にあったのは60年代からの社会の変革だ。教育改革が進み、たくさんの高学歴の女性が社会に出てきた。もともとノルウェーは経済において福祉など公的セクターの比率が高く、女性たちが看護師や教師、介護人材として多数働くようになった。女性の社会進出が進むにつれ、男性よりも低い賃金の改善などを求めて、まずは政治レベルで男女の平等を実現する動きが始まった」

「具体的には、80年代から90年代にかけて、社会民主系や左翼政党を中心に、国政や地方議会で党員の一定数を女性にしようという取り組みが自主的に始まった。これがクオータ制の起源だ。実際に女性議員が増えたことで、女性の労働条件は改善し、公的セクターは安定性を増した。公的セクターで男女平等が当たり前になる中で、今度は民間セクターでもクオータ制が必要では、という議論に必然的になっていった」

――2002年に世界で初めて提案されたクオータ制法案は、08年までに取締役会の4割を女性にしない大企業(主に上場企業)は強制的に閉鎖するなどかなり過激な内容でした。

「言い出したのは、アンスガー・ガブリエルセンという当時の貿易産業大臣だ。それまでも民間にクオータ制を導入するアイデアはあったが、彼が初めて真剣に取り上げた。実は彼自身もビジネス界出身。当時のノルウェーの女性役員の比率は6%程度。彼は普通の男性たちがトップになるのに、とても優秀な女性の同僚や部下がなかなか上にいけないことに強い憤りを感じると話していた」

――経済界は猛反発したと聞きます。

「今でもあれほどの非難を受けたことはない。ガブリエルセン大臣(当時)が150人ほどの大企業の経営者を会議室に集めて、『クオータ制を導入する』と宣言したときに私も同席したが、『そんなことをしたら経済が壊れる』『株が暴落する』『ノルウェーから企業はいなくなる』と大騒ぎだった」