ライフコラム

生きものがたり

実は日本近辺にしかいない ヒヨドリの不思議

2013/10/5

この惑星は命にあふれている。そして命は生から死に至るまでドラマに満ちている。動物であれば、雌雄の出会いがなければ子孫を残せないから、雌雄のドラマもある。鳥たちには渡りというドラマもあり、秋は渡りの季節だ。

ヒヨドリはグレーを基調とした地味な羽色だが、頬には赤茶色の模様がある=写真 石田光史

■多くの野鳥 実は「鳥目」ではない

夏鳥は南に去り、冬鳥が北国から飛来するこの時期、至る所で鳥が渡っているが、その場面を目にすることは少ない。野鳥は「鳥目」ではなく、多くは夜に渡るからだ。参考までに、「夜に見えない」という意味の鳥目という言葉は、飼育下の鶏などが元になっていると思われる。

渡る鳥たちは悪天候で命を落とすこともあるが、タカやハヤブサなど天敵の襲来も避けなくてはならない。それには夜がよい。鳥の体は羽ばたき続けても体温が上昇しにくいようなラジエーター機能を備えているとはいえ、太陽を背にして長距離を飛び続けるのは厳しいこともあるだろう。

例外として、明るい時間帯に渡るのは、ツルやハクチョウのような大型で気流に乗れる鳥たち、ツバメのように飛行力に優れ、飛びながら採食ができる鳥たちだ。ヒヨドリ、カケス、メジロなども例外組で、朝に街の中でも渡りに出会える。

多くの鳥は星空に飛び立ち、暗い間は飛び続ける。日が昇る頃に一端降りて採食と休息をしながら夜を待つ。これを繰り返し、何千キロに及ぶ距離を移動するのだが、ヒヨドリなどはそれほどの長距離移動はしないようだ。早朝に飛び立ち、日が高くなると降りる――を短期間繰り返す程度だと思われる。

渡るヒヨドリの群れ。天気がよい日の早朝から午前9時ごろまで、南や西に飛ぶことが多い=写真 石田光史

■命がけで海を飛ぶ鳥

ヒヨドリは9月下旬から10月中旬にかけて、数羽から200羽ほどの群れで西や南に飛んでいく。スズメとハトの中間サイズで、グレーを基調にした羽色だが、遠くを飛んでいると小さく黒くしか見えない。「ヒヨ、ヒーヨ」という声と、波を描くように上下する飛び方に気をつけているとわかるだろう。

ヒヨドリはスズメやカラスがいない島々にも分布しており、日本で最も広く見られる鳥といえる一方、日本列島周辺にしかいない。「どこのヒヨドリがどこまで移動するのか」はよくわかっていないが、外国のバードウォッチャーにとっては珍しい鳥であることは間違いない。

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