2014/4/5

生きものがたり

ホオジロの雄。スズメと違い、腹が茶色。「チ」とか「チチチ」という声も違うが、歌も特徴的=写真 石田光史

庭や公園 身近な場所でも

アオジはシジュウカラのような細い声で、鈴を震わせるように歌う。繁殖地となる本州中部以北の高原や北海道ではこれからよく聞かれるようになるが、冬を越した本州以南の低地から標高の高い地域や北方へと夜ごと移動していくこの時期は、庭や公園でも聞くことができる。

節回しは複雑だが、ホオジロと比べるとわかりやすい。ホオジロは里山を代表する小鳥で、農地や河川敷、山や林の縁などに普通にいる。複雑で早口な歌には「一筆啓上仕り候」「丁稚(でっち)びんつけ言い付けた」「サッポロラーメンミソラーメン」など新旧数々の聞きなしがある。声の質は似ているが、ゆったりしたテンポで「イッ、ピーツ、ケイジョ、ツーカマツリ、ソロソロ」くらいなのがアオジだ。

聞きなしは、自分で作るのがよい。人によって聞こえ方が違うからだ。コジュケイというキジの仲間の「チョット来い」は有名だが、「カーチャン可愛い」と聞く人もいれば、「カーチャン怖い」と聞く人もいる。英語人種には「ピープルプレイ」があり、信心深い人にはPray、遊び人はPlayと聞こえるそうな……。

バードウオッチングを楽しむのに、目や耳がいい必要はない。野鳥は気づきさえすればどこにでもいる。見分ける、聞き分けるには「慣れる」「比べる」「絞り込む」こと。基本は生物多様性、たくさんの種が共存しているという原則にある。種が違うと暮らし方に違いがあり、地域や季節、環境が違えば争いは不要だ。野鳥の場合、植物や昆虫ほど種数が多くないので、地域とともに「いつ、どんな環境にいるか」ということで、種まで絞り込むことができるものも少なくない。

(日本野鳥の会主席研究員 安西英明)

安西英明(あんざい・ひであき) 1956年生まれ。日本野鳥の会が81年、日本初のバードサンクチュアリに指定したウトナイ湖(北海道苫小牧市)にチーフレンジャーとして赴任。野鳥や環境教育をテーマとした講演で全国各地を巡る。著書に「スズメの少子化 カラスのいじめ」など

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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