春にうれしくなるのはなぜだろう。はるか昔、文明や社会を手にする前の私たちには、冬を耐えて春にたどり着いた喜びは大きなものだったに違いない。それが私たちの体内にまだ残されているように思える。
雌に「選択権」 こぞって歌う雄
春は小鳥たちにとって恋の季節でもある。たくさんの虫を餌にして、短期集中の子育てを始めるが、その前に雄と雌がペアとならなくてはならない。小鳥の雄がこぞって歌うのは、「選択権」を持つ雌に見初めてもらうためだ。
ウグイスやシジュウカラのような比較的単純な歌(さえずり)は聞き分けやすい。メジロやツバメは難しいが、人家近くでよく聞かれる歌の中で、早口で複雑で長いのはこの2種くらい。ツバメは姿を確認しやすいし、高い緑の茂みの中で歌うメジロは「声はすれども……」で見当がつく。
ただし、4月は渡り途中の小鳥もいるので油断ならない。
東南アジアからツバメに続いてやってくるキビタキやオオルリは山地で子育てをする。だが、渡りは夜なので、暗いうちに目的地に着かないと、朝に降りて夜を待つ。そのため4月は身近な緑地にもいるし、雄はそこで歌うこともある。
聞き分けるポイントは、年中「ヒヨ」とか「ヒーヨ」と単純に鳴いているヒヨドリを意識すること。声の質は似ていても、鳴き方が複雑なので判別できる。弾むような繰り返しがあるのはキビタキ。伸ばす声を含めて流れるように尻下がりに歌うのがオオルリだ。