野鳥の子育てというドラマがそこかしこで展開されている。今こそ気づいておきたいのは、子は夏の間に自立し、親子の関係が終わってしまうからだ。私たちや籠の鳥と違って野生の鳥たちは毎日がサバイバル。ペアやファミリーという関係を長く続けることはできない。
■水に飛び込み魚狙うハンター だが失敗も多く
巣立ち後の幼鳥は自立するまでは親鳥を追いかけ回し、翼をばたつかせる甘えのポーズで餌をねだる。親鳥は必死にねだる子にしか餌を与えない。とはいえ、それぞれが必死にねだる結果として、餌が行き届くことになるらしい。
懸命に生き残ろうとする子にはけなげさやたくましさを感じるが、私自身が親となってからは、子に追われながら虫を探し、捕らえ、与えなくてはならない親鳥に同情するようになった。今では子の執拗な催促を「くれくれ攻撃」と呼んでいる。私たちのドラマの見方はどうも自分の立場が中心になってしまうようだ。
狩りをする猛きん類はハンターと呼ばれるが、色鮮やかで人気のカワセミも、水中に飛び込んで魚を狙うという習性からハンターと呼べる。
ハンターの共通点として思い浮かぶのは、ハンティングには失敗が多いこと。かっこよく飛び込んでも、魚に逃げられ、何もくわえていないカワセミは珍しくない。狙われる側の身になればわかる。カワセミが襲ってくれば、魚は逃げて当然。鈍いとか、弱っているとか、何らかの理由があって逃げ遅れたものが獲物になっているはずだ。
近所の池で、水上に突き出した枝にカワセミの親子を見つけた。ひたすら水面を見つめている親鳥の横で、2羽の幼鳥が餌をねだっている。
思うに、親鳥の視界には何匹かの魚影が捉えられている。だが、ただ飛び込めば捕れるものではない。どの魚を狙うべきか、どのタイミングで飛び込むべきか――。親鳥は下に向けたままの視線を微妙に動かし続けている。一方、親の事情をわかるはずもない子供たちの催促も、親鳥をつつく勢いで続いた。