ライフコラム

生きものがたり

近年激減したハンミョウ 道路舗装で失われたすみか

2014/5/31

かつて、ミチオシエと呼ばれ親しまれた虫がいる。

青と赤の斑紋が鮮やかなハンミョウ=写真 永幡嘉之

幼かった日、家から少し歩いたお寺の本堂は森に囲まれた裸地となっており、そこは法要などの時を除けば子供たちの遊び場だった。幼稚園か小学校1年生だったか定かでないが、新学期に入ってまもない頃、そこにいる青と赤の鮮やかな虫がハンミョウ、茶色で地味なものがニワハンミョウで、どちらも「ミチオシエ」と呼ぶのだと祖父に教えられた。

■通称「ミチオシエ」、人を誘うようなしぐさから

近づいてもすぐに飛んでしまい、子供にはなかなか手に負えない。虫捕り網をかぶせてようやく捕らえ、しっかりと握りしめた体は思いのほか華奢(きゃしゃ)で、手には独特の芳香が残った。周囲の森から響いてきたハルゼミの声が耳に残っている。

大きな目、大きな口。頭の半分ほどもある大あごで、他の虫をつかまえて食べる。細くて長い足とあわせて、いかにも敏捷(びんしょう)そうに見えるのだが、地面に座り込んで彼らの行動を眺めていると、実際には思うほど機敏ではない。獲物を捕らえる際にも飛ばず、速足で歩いて近づいてから襲いかかる。そして、くわえた獲物を振り回しながら、弱るのを待って食べる。

地肌とよく似た色のニワハンミョウ=写真 永幡嘉之

素早く飛ぶのは、むしろ人から逃げる時だ。路上からパッと飛び立って先に先にと着地し、振り返ってこちらを誘うようなしぐさから、ハンミョウの仲間は「ミチオシエ」と呼ばれていた。

あるとき、林道脇の浅い側溝に10匹ほどのニワハンミョウが落ち込んでいた。近づくと飛んで逃げようとするのだが、溝に沿って左右に低く飛ぶばかりで、逃げ出せない。どうやら、水平に飛ぶことはできても垂直方向に上昇できず、壁が10センチほどあれば逃げ出せないらしい。生きものには人工物が思いがけない障壁になることがある。

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