定年なき古典芸能の世界、進化を見続けたいピンボケおやじ記者が行く

3月8日、東京・南青山のギャラリーで開かれていた「人間・人形 映写展」に行ってきた。文楽の魅力を斬新な映像で紹介する催しで、人形遣いの桐竹勘十郎さんに「面白いですよ」と勧められた。

「文楽の夕べ」で人形を遣う桐竹勘十郎さん(2011年11月、大阪市北区)

文楽を代表する名作、近松門左衛門の「曽根崎心中」の道行きと心中の場面にスポットを当て、ハイスピードカメラや3Dカメラなど最新の機器で人形の動きを撮影、多彩な仕掛けで見せた。主人公のお初を人間国宝の吉田簑助さん、徳兵衛を一番弟子の勘十郎さんが遣(つか)っている。今の文楽で最も客が呼べるコンビと言っていいだろう。

大阪の文楽初春公演には出かけたが、東京の2月公演は行かなかった。東京はいつも混む。前の方の席は埋まっていた。目が悪いので後ろの席ではよく見えないので、「やめよう」と決めてしまった。消極的な決断だった。舞台がかすんでいても、浄瑠璃を聴きに行けばよかったのだ。

お初と徳兵衛の真情が胸に迫り、涙が出てきた

埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンターのロービジョン(弱視)クリニックで、診察とコンサルティングを受けてから、気持ちが積極的になっている。好きなことや楽しいこと、面倒なことだって臆せず、意欲的に取り組もう。

「人間・人形 映写展」のパンフレット

南青山の映像展は小さな会場の2カ所に映写ルームがあった。立ち見をして席が空くのを待って、両方とも最前列で鑑賞した。

最初は専用の眼鏡をかけて3Dの映像を見た。お初と徳兵衛が画面から飛び出してくる。画面に奥行きがあって立体的だ。画面の鮮明さに驚く。人形から情感があふれ出すのは簑助さんと勘十郎さんの芸の力だ。ハイビジョン映像が鮮やかに至芸を映し出す。10分に満たない短い映像を4回、繰り返して眺めた。

もうひとつの映写室では道行きから心中までの場面場面をさまざまなアングルから精密にとらえた映像を流していた。4分の1倍速のスローな映像なのに人形の動きは緊張感をはらんでまったく緩みがない。死出の旅を心に決めた、お初と徳兵衛を凝視しているうちに、ふたりの真情が胸に迫り、涙が出てきた。