今も世界で年5万人が亡くなる 実は怖い狂犬病

狂犬病の発生状況(厚生労働省ホームページより)

4月は動物病院の繁忙期である。狂犬病予防法により、犬を飼う人は年1回、犬に予防接種を受けさせる義務があり、行政と獣医師会が4月に集合注射事業を実施するからだ。

国内での犬の発生、1956年が最後

狂犬病ウイルスは脳神経系を侵し、発症すれば100%死に至る人獣共通感染症(ズーノシス)である。ズーノシスとは人を含む脊椎動物間に感染可能な微生物による感染症のことで、その代表格が狂犬病だ。日本では1956年を最後に犬には発生していないが、世界では今も推定で年間5万人の死者がいる。

狂犬病が発生していない国は世界ではまれで、日本や英国、オーストラリア、ニュージーランドなど海に囲まれ防疫上の利点を持っている国に限られている。台湾は清浄国だったが、2013年、野生動物のイタチアナグマに発生が認められ汚染国となっている。

ヨーロッパはキツネが主要なキャリアとなっており、キツネから人、牛、猫などへも感染し、餌に入れた経口ワクチンを森林に空中散布するなどでまん延を防いでいる。北米ではアライグマ、スカンク、コヨーテ、コウモリで、グランドキャニオン観光でガイドが「リスが出てきても触らないように」と警告し、理由として「Rabies(狂犬病)があるから」と言っていたのにはハッとさせられた。

集合注射の風景

狂犬病清浄国の日本にいると分からないが、アジアなどの汚染国では野犬や野生動物に直接触れる機会を作らないように努めるべきで、06年にはフィリピンで犬にかまれて発症した「輸入感染者」が2人、帰国後亡くなっている。

狂犬病は人から人への感染はなく、動物の唾液中にウイルスが出現し、咬傷(こうしょう)により感染する。もし汚染国で動物にかまれたら、直ちに傷口をせっけんと水道水で洗浄し、速やかに狂犬病ワクチンを接種する(暴露後ワクチン)ことが勧められる。

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予防注射現場、かつては修羅場
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