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イワシの泳ぐ方向、右回り多く 群れの不思議な行動

2013/8/17

 イワシは魚へんに弱いと書く。水族館に勤め始めた頃、イワシが弱い魚であるということを実感した。

水族館で人気が高いマイワシの群れ(葛西臨海水族園提供)

■扱いが難しいマイワシ

 もう40年以上も前になるが、水族館ではまだマグロやサンマなど高速で遊泳する魚はほとんど飼育できていない時代だった。マイワシの飼育に初めて挑戦した時、正確な記録を取るために1尾1尾数えながら水槽に入れていた。どうしても時間がかかって魚が弱り、作業を終える頃には、水槽の底が死んだマイワシで銀色に光るまでになってしまった。

 死んだ魚を全て取り除いて帰宅したが、翌朝、出勤すると、昨夜と同様に水槽の底が銀色に光っていた。他の魚では、これくらいの作業で死ぬことはなかったのに、マイワシはそうはいかなかった。

 その後、魚をバケツで水ごとすくう、あるいはビニール製の小型担架で水ごと運ぶという、丁寧に扱う工夫が定着して、イワシの水族館での飼育がようやく可能になった。最初に個体数を数えるのは、もちろんやめにした。

 いろいろ工夫したあげく、東海大学海洋科学博物館では、間口3mほどの水槽に奥の壁が見えないほど大量のマイワシを展示することができた。きれいな群れをつくってガラス面を一方向に泳ぐ姿は人気があった。

口をあけて泳ぐマイワシの群れ

■一度決まると同じ方向で泳ぎ続ける

 見に来た人から、泳ぐ方向はどうやって決まるのか、方向はいつも同じなのかと、よく聞かれた。泳ぐ方向がどうやって決まるかは分からないが、海のいけすに蓄養されているマイワシの泳ぐ(回転する)方向を調べたら、7割強が右回りだったという高名な先生の観察記録があって、確かに右回りに泳ぐ場合が多いようだった。

 あるとき、展示しているマイワシがかなり減ったので新しい群れを追加したところ、新しい群れの泳ぐ方向がそれまでと逆になったことがあった。新旧のマイワシは混じり合わず、それぞれに別の群れをつくり水槽の中で上下に分かれて逆方向に泳いだ。この状態は片方の群れがほとんどなくなるまで続いた。水槽に入れたマイワシの群れはいったん泳ぐ方向が決まると、変えることなくずっと一方向に回転しているのだろう。

 マイワシの餌は水中に漂っている小さなプランクトンで、これをえらの後ろにあるくしのような器官でこしとって食べる。餌をとるときは大きく口をあけて泳ぎまわり、プランクトンを水ごと口の中に取り込む。まるでこいのぼりのような格好で泳ぐ。

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